ハザード・オブZ
あらすじ
「ゾンビが(中略)死ぬ」
「全編POVで描く地獄めぐりの旅へようこそ!」。そう謳うパッケージが品質保証する通り、本作は80分間を虚空に投擲する地獄である。この手の作品のレビューで何度か言及しているような気がするが、結局POVという作品形態の大多数は、臨場感だの没入感だのといった言葉を免罪符として、構図やカメラワークといった映像文法に係る労力のコストカットを試みる映画界の清水正孝による汚物であると言えよう。
こんな映画を見るぐらいならバイオハザードの7とか8で遊んだほうがいいと言ってしまいたいが、それで終わらせるのも敗北主義に等しいのでいつも通り感想を述べていく。本作の筋はある日突然ゾンビが発生したからオッサンが逃げるという「またこの流れか」といいたくなるような斬新なストーリーラインである。ゾンビから逃げるためにウォーキングしたりランニングしたりする映像が作品の大部分を占めており、ごく稀に挿入されるアクションシーンではおもちゃ丸出しのグロック拳銃がパチン!パチン!とダイソーで売っている火薬銃の様な雄たけびを上げる。最終的にオッサンはキリスト教系カルト教団のアジトにたどり着くが、結局そこで神父のオッサンが「神はいわゆるゴッドなんですよ」とほざきつつ集団自殺を行うというハレルヤを開催し、なんやかんやでオッサンは感染して死ぬ。
本作ではたびたびオッサンがスマホで親族と連絡を試みるシーンが挿入される。そこでは主観視点からさらに狭窄したスマホ画面が強調されている。このフレーム・イン・フレームによって強調されるのはもちろん画ではなく通話音声である。映像文法によって音声を際立たせようという非論理的手腕を革命的と評することもできるかもしれないが私の知能程度ではその様なプラス思考に至ることはできなかった。
まともな教育を受けてきた人間なら開始20分ぐらいで本作をゴミ箱に投擲するだろうことは想像に難くない。だがしかし、私の様な程度の視聴者ならば時間つぶしぐらいにはなるだろうといったところである。すなわち、低レベルな映画を低レベルな視聴者が低レベルな鑑賞法で楽しむという意義においては本作は生存価値を保っている。たまには時間をドブに捨てるのも一興というゆとりをお持ちの奇特な方であれば、安酒(私は酒が飲めないのでチェリオの安ジュースで妥協した)を片手に楽しむのも一興ではなかろうか。
総合評価・星2つ(500円の価値無)
★★☆☆☆
以上