ハイブリッド・バトル プリウスvsインサイト

あらすじ
「車はソシャゲ」
主人公は眠たそうな目をした髪型セブルス・スネイプ風の冴えないオッサン。彼は昔“湾岸の帝王(自称)”であったことを誇りとしている。家族のために新車を買おうとする妻に対して彼は「ハチロクは走り屋としての俺の魂だ!」と年齢相応の熱弁を振るうが、妻に「息子をドライブに連れて行ったことも無い奴が偉そうにすんな何が走り屋だよ大人になれバーカ」との正論魚雷の直撃を頂戴し、航行の道を断たれた走り屋(失笑)の姿はさながら戦艦ビスマルクの様で実にアークロイヤルである。
走り屋(爆笑)の迷惑公道レースの様子はアナルファックの一言である。夜の高速道路の直線道を走る単調なシーンが大部分を占める。ヘッドライトの逆光が眩しくて車のシルエットも場の全体状況もわからない。対決する車を切り返しショットで捉えようとするも、前述のロケーション&撮影の不味さによって決闘の表現が成されていない。
カメラワークについて付言しておきたいのは、本作のカメラ担当が魅せる映像技術の乱舞である。それはまるでカメラ買いたてのトーシロが付属の機能をとりあえず使ってみたと言わんばかりの作法であり、むやみやたらにズームインやズームアウトが多用され、そこに手ブレまで加わるこのビジュアル処方箋は開始数秒で視聴者の目に明らかとなる欠陥として本作の地位を確固たるものとする。
レースの勝敗を分ける要素もこれまた傑作であり、それはドライバーの腕や魂などでは決してなく、単にヒミツの整備工場で車のパーツを変えてもらったら勝ったぜという資本主義の豚どもによるお遊戯である。勝負で勝つには札束で殴って課金しろと言わんばかりの他力本願主義を顕現させた本作が、明日を生きる労働者に夢と希望を与えることは自明である。
あげくのはてのラストでは走り屋(苦笑)のライバルが「いつまでも走り屋やってても進歩ねえよな!これからはリッター何km走れるかで競争しようぜ!」とか言い出してフィナーレである。日和ってんじゃねえか何が魂だよ地獄に堕ちろと唾を吐いた私の思考がSDGsに反する愚かなアンチエコ思想であることは言うまでもない。
キャラクターは自己中のアダルトチルドレン。ストーリーは家計負担を顧みない重課金。それを彩る美術や構図といった技術的要素はゼロ。エコが目的なら本作を観ずに黙ってウォーキングをしていた方がはるかに建設的である旨を提言して筆を置く。
総合評価・星2つ(500円の価値無)
★★☆☆☆
以上