ワンコイン・ムービ-レビュー

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真夜中の同乗者

あらすじ

「メンタルをコケにするな」

 

 幼いころの自動車事故で両親を亡くしたヒロイン。彼女はその時に負った自動車恐怖症を克服するために女性セラピストと長距離ドライブへと旅立つ。ゲロを吐きそうになりながら耐えていると、いきなり飛び出してきた浮浪者風のオッサンと接触事故を起こしてしまう。幸いにも大事には至らなかったことと、オッサンへの罪滅ぼしのため、さびれた山中のキャンプ場まで彼を送り届けることに。その帰りに車はパンク、救助を呼ぶために取り出したケータイはもちろん通じない。

 

 「やっぱりあのオッサンはヤバかったんだょぅ…」とパニックに陥るヒロインを横目にセラピストは刺殺され、ヒロインも気絶させられる。気づけば密閉された車内の中。助けに来た近所のオッサンも死んでしまい、どうするヒロイン。

 

 本作は身に降りかかった理不尽な災厄との戦いをテーマに描いたモノであると言えよう。交通事故(幼かったヒロインは後部座席に同乗していただけ)にヒッチハイカーに偽装した通り魔。彼女に過失はない。しかしそれが何らかの免罪符になることはなく、彼女は理不尽と戦わなくてはならない。

 

 セダンの車内という閉じた空間が、我々が行動可能な人生という選択肢の狭さを視覚化している。犠牲者の血が塗りたくられた窓々がその不穏さを強化する。

 

 救いのないラストは我々の人生にも通じるものがあり、であれば本作はゴミではない。星3つかそれ以上、4つは行き過ぎかもしれないが3.57ぐらいはあげてもいいような気がする。マグナム弾的に。

 

 しかし本作にはどうしても許しがたい点がある。それは通り魔のオッサンの設定である。なんと彼は「精神病院から逃げ出したヤベー奴」という扱いなのだ。実にファッキンクライストである。メンタル疾患をモンスターのイメージと連環させるその前時代的な人権意識はオウンゴールにも程がある。よって加点どころか星をさっぴいた評価を本作に貼りつけて筆を置きたい。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上