ワンコイン・ムービ-レビュー

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アニマル・パージ

あらすじ

ナショジオを見よう!」

 

 “ある日突然すべての動物が人類の敵になったら?”このコピーを読んだ刹那、「そもそも動物って人間の味方だったっけ?」と疑義を呈したある淑女の指摘に敬服しつつ本作を紐解いてゆきたい。

 

 本作は単にカラスや犬がヒューマンをどつきまくる72分間を提供する一大スペクタクル長編映画であり、その本質は「ネットで騒然!びっくり映像100連発!」といったテレビ番組と大差はない。カラスやら犬やらがガシャーンとガラスを割って人間を突っついたり噛んだりする映像の連続は、その緩急の無さから次第に見る者を欠伸へと誘う歌姫として機能する。

 

 愉快なストーリーや魅力的なキャラクター、見る者を唸らせる美術や構図などといったものを本作から見つけ出そうとする試みは、ポン・デ・リングにかかっているきなこから砂金を抽出して億万長者を目指すのと同レベルの困難を伴うだろう。

 

 主役の女学者は「半端ねぇゴリラが発する超音波によりアニマルたちは操られているのよ!」とのたまい、特にその半端なさが描写されることも無く、あわれゴリラは麻酔弾を撃ち込まれ気絶するが当然問題は解決しない。その代わりにオタクのモヤシボーイがウイルスに感染してクリムゾンヘッドになり警察官を殴ってハッピーエンドである。

 

 ここから読み取れることはすなわち、自然に対して人間の立てた仮説などというものは全くもってあてにならないものであり、我々を超越するその圧倒的な力を前に、我らは無知蒙昧な祈りを捧げるしかないということである。自然に適応して生きるアニマル様を前に、文明化という名の退化を果たしたヒューマンビーイングはそびえたつクソでしかなく、私たちにできることはただ逃げまどい許しを請うことだけなのだ。もちろん健全な思考力を有した地球市民が想定するような「単に脚本家が何も考えてないだけじゃねえの」といった侮蔑的な指摘が的外れなものであることは自明である。

 

 本作唯一の美徳としては、近年流行りの動物愛護系テロリストが、愛する動物ちゃんにきちんと皆殺しにされるところを挙げることができるが、彼らの最後は単なる撒き餌のそれであり、彼らの思想信条が不可分に保持しているジェダイの騎士めいた高潔な最後が演出されることはついに無かった。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上