ディープポセイドン
あらすじ
「散歩」
映画が始まってしょっぱなから、ショボいサソリの模型が潜水艦の乗組員たちを殺していく。開始数秒で「ああ、敵のモンスターはこいつらなんだな」と丁寧なチュートリアルで説明してくれたあげくに、「行方不明になった潜水艦を探索してこい」とチームに命令が下る。犯人が誰かバラした上で「さあ犯人は誰だ!」と煽るミステリ小説のごとき序盤は一瞬で視聴者の背筋を脱力させるに十分である。
そうして海兵隊員数名と、どうみてもサソリと関係ありまくりングな企業の社員4人が艦内へ入っていく。ここで考えてみてほしい。潜水艦とは長期間海の底で任務に就く、衛生環境はあまりよろしくない空間だ。そこに加えてこの潜水艦は行方不明になっていたところを発見された。ならばその中に突入するには相応の準備が必要であることはおわかりであろう。
しかし海兵隊は防毒マスクなどの準備は一切せずに艦内への扉を開ける。案の定凄まじい異臭が彼らを襲うが、海兵隊員たちは「くっせ笑」「こいつはマンコの臭いだぜ」「HAHAHA」とか言ってる。完全にアホである。
ここでもうゴミ確定かと思いきや、艦内の探索シーンは結構よくできているのだ。暗闇の中荒れ果てた潜水艦、あちこちに腐乱死体が飛び散る中で銃を構えて捜索する役者の演技は、「さっきまでのあんたらは何だったんだ」とびっくりするレベルである。
怖さだけでないシーンもある。技術者の脂ぎったキモデブが電力回復のために配電盤をいじるもうまくいかず、ハンマーで配電盤を叩きまくって電力を回復させフヒュヒョホホホと喜ぶシーンや、企業のオッサンが床に落ちた謎の物質を見て「何だこれは?ペロッ、これは実験動物のウンコ!」とかやらかすところは正直なんといっていいかわからない。
しかし長い。いかにセットの作り込みがよくても、役者ががんばっていても、50分以上探索シーンが続くのである。もうここまでくればクソ企業の作ったサソリ兵器が艦内にいることはわかりきっているのに延々と艦内を歩き続けるシーンを見るのは辛いものがある。
やっと戦闘シーンが始まったと思えばショボい。暗闇の中で銃火が見えるだけでサソリが映っていないシーンすらある。登場人物がサソリに全身を切り刻まれて大量出血で死ぬなどバカにできないところもあるのだが、全体的に見れば、海兵隊「ファイアー」サソリA「ギェェェ」サソリB「キシャァァァ」海兵隊「ウギャァァァ」こんなんである。
ラストは海兵隊の軍曹がウンコ食った企業の親父を焼き殺した後、潜水艦ごと自爆。生き残った姉ちゃんがほっと一息つくと、後ろにサソリ毒の感染者がいて「マジかよ」でスタッフロールである。
本作は恐怖感を煽る探索シーンは良くできている。失敗の要因はしょっぱなに敵の正体を明かしたことだろう。敵の正体を明かさずに、その恐ろしさは血祭りにあげられた仲間の死体で表現する方式でやっていれば本作は輝けたのではないかと愚考する。返す返すも惜しい作品であった。
総合評価・星3つ(500円の価値有)
★★★☆☆
以上