ディープ・フリーズ
あらすじ
「カンブリア宮殿」
一私企業が南極で石油をボーリング調査しているという状況から物語は開始される。しょっぱなから南極条約との関係はどうなるんだというコンプライアンス問題を投げかけてくれる点において、本作は企業法務担当者にとって希少価値が認められる。
開始早々ダークサイドに染まった女博士が「標本を運び出して証拠隠滅よ」と命令し、ブラジャーに収まったシリコンの乳を披露した後バケモノに瞬殺される。そして淡々と調査とバケモノの襲撃シーンが流される。
襲い来るバケモノ、襲われる人々、その演出は秀逸である。バケモノの姿が1秒に満たない時間映った後はフラッシュがたかれ悲鳴が流れる、このフォード生産方式的演出により視聴者の目はくぎ付けにされる。
襲撃される人々も愉快である。胸、背中、上腕に逆立った毛をモッジャモジャに生やしたイエティみたいな中年オヤジはぷよぷよの体を惜しげもなく披露してシャワーを浴びる。彼は「Oh~,Uh~,Ah~」と一通り喘いだ後見事な無駄死にを遂げた。他にもお約束通りこっそりセックスしていたカップルが映画界の見えざる手によって調節死亡するなどウハウハである。
調査を担当するガレッジセールのゴリみたいな女は「犠牲者の死体から採取した未知の体液が先カンブリア紀の三葉虫のデータと一致したわ」と優秀さを発揮する。ただ、彼女はインターンで学位を取りにきた学生である。彼女のラップトップに三葉虫のデータが入っていたことは当然と考えるべきなのだろうか。そもそも三葉虫のデータってなんだ。
三葉虫の襲撃により1人また1人と犠牲が増えていく。その中でベテラン技師はこう提案する。「雪上車でロシア軍の基地に逃げ込もう」。この言葉を聞いたとき、私が抱いていた疑問は氷解した。すでに南極はロシアの手に堕ちていたんだ。礼儀正しい人々はここまでやってきたんだ。さすがはプーさん(元KGB)、そりゃ国際法もクソもないわ。
私が妄想をたくましくしている間にも三葉虫はゼンマイ仕掛けのオモチャみたいな動きでゴリ達を追いかけていき、ゴリにショットガンで3発撃たれて死亡する。何故南極の石油企業にショットガンがあるんだなどと考えてはいけない。するとさらにでっかい三葉虫が!しかし大した盛り上がりは無く、負傷したベテラン技師がゴリ達を逃がした後ダイナマイトで自爆して倒す。
これで終わりかと思いきや、爆炎の中三葉虫の肢が出てきて「我が三葉虫は永久に不滅です」的アピールをしてエンドロールである。
こうして文にしてみるとひでえ映画だなと思ってしまうが、視聴時は不思議と全く不快感は無かった。変に奇をてらわず単純なモンスターパニックに仕上げてきたのが良かったのだろうか。予算の都合上演出面が低品質であるものの王道の枠からはみ出なかった、本作の勝因?を求めるならそこになるだろうと愚考する。
総合評価・星3つ(500円の価値有)
★★★☆☆
以上