ワンコイン・ムービ-レビュー

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ゾンビ・ドッグ

あらすじ

「お酒は二十歳になってからでもヤバイ」

 

 仕事でやらかしまくったハゲデブの脚本家が酒に逃げて無事立派なアル中へと成長したあげくに妄想でラリって自殺するという、どこに出しても恥ずかしくない馬鹿の品評会が本作のガワである。

 

 ハゲデブの妄想の中では実に生産的なスペクタクルが展開される。理想のナイスバディなカノジョを見つけてマスターベーションに精を出したり、ムカつく女をブチ殺して拷問したり、喋る犬のアドバイスのおかげで脚本の仕事が軌道に乗ってウハウハになったりする。このここ掘れワンワン的なアメリカ版花咲じじいを眼前に突きつけられた同志視聴者諸君が臨むディベートではかなりの蓋然性をもって「それってあなたの妄想ですよね」の一言でハゲデブを論破できることだろう。

 

 美術についてはそれなりの訴求力があった。訴求力、それはすなわち無職のアル中のハゲデブが住む一軒家に係る美術表現である。ビールの空き缶だらけで床が見えない、パソコンは型落ちの古代遺物、ベッドのシーツは洗濯という二文字から永遠に逃避したようで、壁に貼られたポスターは薄汚い。だから何だと言われれば本作は返す言葉を持たないだろう。汚いオッサンの汚い部屋。それ以上でもそれ以下でもないセットである。

 

 本作で唯一評価に値する白眉は、本作83分間にわたって止むことを知らないナレーションという弾幕射撃である。「俺は今こういうことを思っているんだ」という心象風景を映像によって表現することについて本作は白旗を上げたらしく、延々とナレーションは続く。上映時間が比較的短めな本作だとはいえ、ず~っとず~っと「俺は今こういう気持ちになったんだ」というナレーションが洪水のように垂れ流される上映時間は一度体験する価値が無いだろう。例えるならばちびまる子ちゃんで30分間ずっとキートン山田がしゃべくり続けているようなものであるというえば伝わるだろうか。

 

 煉獄の様に繰り出されるナレーションと汚い美術が彩るアル中のオッサンを眺めて休日を無駄にしたいという方以外に本作を薦めることは犯罪行為であると宣言して筆を置きたい。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

 

以上