ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

アース・トゥルーパーズ 地球防衛軍 VS 巨大蟻軍団

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あらすじ

「大きな蟻のCGが見られるよ!」

 

 捨てるという決断は大きな勇気を必要とする。だがそれにより輝かしい何かを手にすることもできるのだ。劉邦は咸陽の財宝を捨て名声を手にし、ナポレオンはアウステルリッツの戦いにおいてプラッツェン高地を捨て勝利を手にした。

 

 では本作は何を捨てたのだろうか?それはエスタブリッシュ・ショットである。本作は役者を映す。森や街も映す。巨大蟻のCGも映す。個別に。位置関係?そんなものはわからない。説話的構図など夢のまた夢である。登場人物やロケーションが分割され逐次投入されるこのフロントラインに未来はあるのか。

 

 エスタブリッシュ・ショットを捨てた分、本作は何を得たのだろうか?それはテレポーテーション能力である。本作は登場人物入退場自由のフリーダムなフェスタである。登場人物は敵味方問わず一瞬で現れ、一瞬で消えていく。もちろん個性など見いだせるはずもない。一例をあげよう。捕まったオッサンAを救出するためオッサンBとオッサンCがやってくるシーン。刹那、その次のシーンではオッサンBとオッサンCが神隠しにあったように消滅し、代わりに半殺し状態のオッサンDが地面に横たわる。人間に価値などないと主張せんばかりのわかりやすい構成は、編集者の正気を疑うに十分だ。

 

 舞台が暗いのも映像を彩る要因だ。照明の落ちた研究所、地下鉄の構内、夜のニューヨーク。暗くて顔が見えない。輪郭すらわからない。暗闇は恐怖を加速するとはよく言ったものだ。エスタブリッシュ・ショットの不存在や登場人物テレポーテーション現象が暗闇という援護射撃を受け視聴者の双眸にSabre au Clairを仕掛けてくる。

 

 人が「HELP!」とわめくと蟻のCGが流れその後悲鳴が響くといった低予算映画ならではの伝統芸能的死亡シーンや、人物の動きに合っていない効果音のズレも本作の愛されポイントだ。

 

 誰がどこで何をしているのかが全く分からない。もちろんストーリーなんぞ望むべくもない。でかい蟻のCGが暴れているのを99分間見つめる。なんと素晴らしい時間の使い方ではないか。本作はストーリーだのキャラクターだの美術だのそんなものは魔女のバアサンの窯の中にぶち込んでしまえとばかりに人体錬成されたジャイアンシチューである。本ブログをご覧の皆さん、もしワゴンで本作を見つけた場合には速やかに財布の500円玉を虚空に投げ捨て振り返らずに帰路を急いでください。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上