ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

感染創世記

f:id:public-technocut:20210223204803j:plain

あらすじ

「戦争はいけないと思いました(小並感)」

 

 ゾンビが発生した。(中略)世界はボロボロになる。人類はかろうじて生存領域を保っていたが、その維持回復には軍だけでは力不足。軍の補完戦力として民兵が各地で組織されるに至った。

 

 主人公の記者は民兵を取材して戦意高揚番組を作ることがお仕事。しかしその仕事に価値があるのか悩んでいるオンナノコである。「名前と民兵に加入した理由を教えて?」と彼女がインタビューするシーンが逐次投入される。民兵は「家族を殺されて行き場が無いからでござる」と即答する。そして民兵たちが走らないノロノロゾンビをバットで撲殺したり銃で射殺するシーンが坦々と流れていく。

 

 物語は急展開を迎える。立ち寄った酒場で民兵に提供されているスペシャルサービスを目撃してしまうのだ。そこでは捕獲した女ゾンビを鎖でベッドにつなぎ売春の対象にしていた。

 

 精神的ショックを受けた女記者を追撃が襲う。彼女が心を許していたモジャ毛がゾンビと間違えて子どもをフレンドリーファイアしてしまったのだ。深まる絶望の中、仲間の1人がカルト宗教に感化されモジャ毛を殺害する。

 

 取材を終えて迎えのピックアップトラックの荷台に腰かけた女記者。彼女の目からは光が消えていた。そしてスタッフロールではい終わりである。

 

 ゾンビが蔓延したらマヂこんな感じになるんじゃねテンション下げぽよ映画として解釈するには本作は娯楽性を欠いていると言わざるを得ない。本作は人間とゾンビの戦いに仮託して現実の戦争を描いているとみるのが適切ではないかと考える。

 

 具体的に想定されるのは低烈度紛争、特に発展途上国におけるそれにおいて存在を宿命づけられた民兵の絶望である。じわじわとにじり寄る敵に家族を殺された市民は報復感情に駆られて民兵組織へと身を投じる。捕虜とした女兵士あるいは占領地における女性民間人への性暴力。解放すべき同胞を時には誤射してしまう矛盾。その果てに精神を病む兵士。キレイごとしかいえないマスコミにとって戦争は荷が重すぎる。

 

 特に映像的に手を抜いているところがあるわけでもなく、きちんと主張を持っている作品であり、人によっては本作に500円玉以上の重みを与える人もいるだろう。しかし私は本作に星を4つ与えることをためらう。何故か。作品が悪いのではない。私が単に本作をあまり好きになれないという感情論である。

 

 私が芸術における知的貧困層に属する愚か者だからだろうか。寓話とか仮託という形式があまり好きではないのである。もちろんそれらが必要なことは容易に想定できる。圧政による検閲を潜り抜ける必要性などはその典型例だろう。しかしそれが必要ない場合にまであえてそれを投入する必要性を感じ取る感受性を私は欠いている。

 

 より具体的に言おう。本作が描こうとするのは戦争の悲惨さだ。小学生程度の知能が備わっていれば誰でもわかるテーマだ。現実がフィクションを軽く超えているテーマだ。それはわざわざ平穏で表現の自由が尊重される国家で、寓話を用いて製作することだろうか。端的に一言で言えばこんな映画を見るぐらいならガチのジャーナリストのドキュメンタリーを見るほうがはるかに価値があるということだ。

 

 どれだけ頑張ろうが本作の様なタイプの作品はドキュメンタリーの下位互換でしかなくそこに大きな価値を認めることはできないと私は愚考する。

 

 自明のことではあるが、上述した意見が正しいなどと強弁するつもりはない。今この行をタイプしながら、自分が何を言っているか明示知化できているのか全くわからない。あるいは私がノンフィクションから読書を始めたクチだからだろうか、その偏執が作品理解の妨げになっているのだとしたら謝罪する用意はできている。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上