ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

4デイズ・イン・イラク

あらすじ

ブラックホーク・ダウン!←違う←違わない←違う」

 

 舞台は2004年。対称戦後、非対称戦に突入したイラクのとある街ではヒャッハーな反米民兵が市役所をボコろうとしていた。市役所を守備するのは40人のポーランド軍と同数のブルガリア軍、そして300人の新生イラク警察である。これら勢力が鉄砲をドギュンバギュンしているとアクビと共に116分が消費されるというお値打ち商品が本作である。

 

 いってしまえば『ブラックホーク・ダウン』の下位互換といえるであろう本作は、特に擁護できる点も無く、また特に擁護しようとする気も起らない、その程度の作品である。

 

 まず最初に読者諸氏が「話すならさっさと話せよ聞き流すから」とお考えのキモオタによる無益な考察コーナーを消化しておこう。本作で活躍するのはポーランド軍のみであり、ブルガリア軍は指揮官がちょろっと会議で出てくるだけ、新生イラク警察にいたっては何の説明も無くフェイドアウトしている始末である。それなら余計に、わずか40人の兵士による絶望的な防衛線が際立つ側面もあるのでは?とお考えの方もいるかもしれないが、本作に登場するポーランド軍40名の所持する火力はその規模に比して異常に高い。迫撃砲を装備しているだけならまだしもおそらく105mmクラスであろう無反動砲まで持っている。これに対する反米民兵は小規模で、AKやRPGを手に小林源文のマンガよろしく「ウラー」と散発的に突っ込み、やがて死ぬ。『ブラックホーク・ダウン』の米兵の武装が原則小火器のみであり、対するアイディード派民兵がそれなりに統率された数の暴力で向かってきた、この緊迫感と本作を比較することは無礼以外の何物でもないだろう。

 

 カメラも問題である。『プライベート・ライアン』以後ありがちな、「ほらほら動きながらブレてるよ臨場感あるでしょ」撮影法は本作においてもその武威を示している。限定的に。本作のカメラは戦闘中に散発的にブレる。カメラ自体は定点である。誰の視点かわからない、ただ陣地が振動しているだけのその射界にどれほどの価値があるのかは、知的貧困層に属する私の脳髄では判断がつかなかった。

 

 本作に限った話ではないが、本作の様に実話ベースでかつノンフィクションに寄せている戦争映画の問題として、結局何を主張したくてこの映画をつくったのかがわからない点は問題としてあげられるだろう。もしそれが「戦争は悲惨なんだよ!」などという低レベルな主張ならば私はそれらの作品を唾棄する。戦争が悲惨などということは通常の社会生活を営むだけの生活感覚があれば小学校低学年程度で備えている感情であり、そんなことをわざわざ2時間かけて成人に映像訴求しようという発想は愚劣の極みである。戦争が政治の一形態であり最悪の外交手段であるならば、その流れに係る何らかの要素についての主張を私は望む。それがキモオタ的軍事性癖によって歪んだ認知であるとは思わない。大事なことなので重ねて言うが、「戦争は悲惨」などということは神が憐れむレベルの低能でもない限りこの地球上に生きる人類の共通認識である。頼むから、戦争映画は、その先を、我等市民に新たな気づきを与えてくれるような何かを、表現してほしいと切に願う。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上