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スパイダー・パニック!2012

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あらすじ

「Oh, say can you see(見たくない)」

 

 ファーストシーンの舞台はアフガニスタン。みんな大好きアンクル・サムの兵隊とタリバンのテロリストが撃ち合っている。照準器(アイアンサイト)が外れたライフルや、銃の反動を再現しようと腕をプルプル振るわせる役者の演技からは美術担当と演技指導のハイレベルな仕事ぶりが露見する。

 

 舞台は何の芸もなく転換する。荒涼としたアフガニスタンから荒涼としたアリゾナへ。どっちがどっちか区別できない。唐突に過ぎるこの移動はおそらく偉大なる永遠の首席、金日成首領さまが日帝を蹴散らした際に用いた縮地に対するリスペクトであろう。

 

 冗談はさておき、本作は非常に頭の悪い作品である。化け物スパイダーがアリゾナで大暴れ!パーリーピーポーの喉笛を食い破るぜ!だが安心しろ!軍人と保安官と一般市民がアサルトライフルを撃ちまくって全て解決!ここから何かしらの叡智を読み取ることができるだろうか?

 

 この手の映画が得意とする「オッサンが棒立ちでライフルを撃つ」は平常運転だ。クソの役にも立たないクソガキが無駄にしゃしゃり出てきてそれを助けようとしたオッサンが無駄に死ぬなど微笑ましいシーンの挿入はある種の嫌な安心感を我々に提供してくれる。

 

 さて、本作の中盤のあるシーンでモブのオバハンが主人公の軍人にこう問いかける。「武装市民についてどう思う?」。本作はこの問いに対して好意的だ。それは武装した市民が軍人や保安官と共に戦うというシチュエーションから明瞭に読み取れる。保守派が作ったB級映画。そう、本作はクソ映画界の独立戦争なのだ!

 

 などといって本作を褒めるかと?言ったはずだ。本作は非常に頭の悪い作品だと。それは武装市民の表現にも当然係ってくる。本作において市民たちは武装して戦う。では何で武装するのか?それは“軍の提供する”M4アサルトライフルである。

 

 だからどうした?という方は合衆国憲法修正第2条の趣旨を今一度考えてもらいたい。規律ある武装市民の存在意義はパトリオティズムに基づく郷土防衛だけでなく専制政府に対する抵抗権でもある。すなわち武装市民は国家権力と緊張関係にあらなくてはならない。“軍の提供するライフル”を使って“軍の指揮下で戦う”民兵という概念は抵抗権に対する背任ではないか?

 

 アメリカ独立戦争時には正規兵も民兵も混在してたんだから細かいこというなよという考えも浮かばないでもなかったが、250年前の戦時と現代の平時を同列に考えるのはどうかと結論してこの文章を書いている。読者の方々にはすでに露見していることではあるが私は学も教養もない愚か者であるため、上述の主張が「100億光年%の正義である!」などと強弁するつもりは毛頭ない。指摘されるべき箇所があれば遠慮なくコメント欄に!

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上