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サード・デイ ホラムシャハル攻防戦

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あらすじ

「寛容は硝煙にかき消され」

 

 時はイラン・イラク戦争、舞台は国境に接する街ホラムシャハル。戦車を有するイラク軍の侵攻をかいくぐり、イランの民兵が奮闘する。敵中に取り残された1人の女性を助けるために。

 

 「フセイン戦車軍団包囲!」「非情のイラク戦車部隊!」とコピーは謳うが、戦車は大して活躍しない。微速運転で街をお散歩するだけで、戦車砲は張子の虎である。配給よ、お前はちゃんと見てコピーを書いたのか。答えは限りなくNonに近いだろう。

 

 戦車と言えば、どうでもいいと思われるかもしれないが1つ謝罪をしておきたい。本作に登場する戦車、残念ながら自信をもって見分けることができなかった。キモオタを名乗っておきながら情けない、ここに伏してお詫び申し上げる。多分T-62だと思うのだが・・・。

 

 イラク兵が統一規格の軍服や自動小銃を装備しているのに対して、イラン民兵は平服に雑多な小火器装備(FAL、G3、AK、ドラグノフ、M1ガーランド)である。寄せ集め感がはっきりとわかる。しかし、その割にイラン民兵は強い。RPGで装甲車をボコボコにして戦車部隊の包囲を易々と突破する。

 

 終盤、イラク軍に包囲されたイラン民兵は、通信機を使い各々別れの言葉をつぶやいていく。その間約10分。敵中で。「長すぎやろ」とは漏れ出た私の感想である。

 

 美しいシーンがあった。それは屋内に捕らわれた女性がイラク将校に銃口を向けられながらも、それに怯むことなく堂々と外に続く廊下を歩むシーンだ。彼女はイラクによる爆弾テロで負傷した足を引きずって歩く。それだけではない。彼女はイラク将校を撃たないよう仲間に懇願する。民間人で、女性で、身体障碍者。戦場において最弱者と言える彼女が見せた歩みと許し、それは寛容の矜持ではなかったか。

 

 絶望するシーンがあった。女性を守ろうとしたイラン民兵はことごとく戦死。追いすがるイラク将校。彼は女性の命を救おうと考えている。しかし追跡の過程で多くのイラン民兵の命を奪った張本人でもある。女性とイラク将校は再び対面する。彼女の手には死んだ民兵のライフル。照門と照星が描く一文字が彼女の視線と同化する。一度は許した相手に向けて、結局、轟焔は絶叫した。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上