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黙示録2009 強襲強酸雨

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あらすじ

脳筋(アメフト部)が焼けただれるのを愛でる映画」

 

 悪徳企業が流出させた排気物のせいで雨が一瞬で酸性雨になり人が死ぬという安直なストーリー。それでもその単純さゆえに、本作は頭悪い系災害映画として最低限のラインを保つことに成功している。

 

 しかしながら本作のDVDを愛おしく抱きしめることはできない。登場人物の設定・行動、瑕疵はそこに存在するのだ。

 

 主人公は晴耕雨読の生活を送る世捨て人の元研究者で、スタンフォードの博士号を最年少で得た天才という設定だ。しかし彼はその天才ぶりを一向に発揮しない。そればかりか登場するサブキャラも同じくスタンフォードの後輩という設定であり、かなり優秀なのだ。ある女子はロクな器具もない中で気管切開手術を成功させ、ある黒人は郡政府のデータベースにハッキングを仕掛ける。では我らが主人公は?酸性雨の発生を知った彼はPCを活用し、猛り狂う。「ネットにもテレビにもブログにも情報が無い!」

 

 情報の入手方法がそこらのネット右翼と同レベルの天才に価値を見出せるだろうか。バカを露呈する主人公に対し有能さを示すサブキャラクター。戦力は相対的な概念である以上、ここに主人公を肯定することは不可能である。

 

 また、主人公は理想破れた世捨て人という設定も持っている。大学卒業後、一度は就職した大企業から、彼は不正を持ちかけられる。利潤は科学を腐敗させる。そう達観した彼は山にこもって生活するのだ。そこにあらわれたサブキャラの黒人は学生らしい青臭さで堂々と主張する。「不正とは戦うべきだった」と。

 

 なるほど。厭世主義者と理想主義者の対立構造を演出し、主人公の再起を描くつもりだな。本作はそんな私の予測をマルモン元帥の様に華麗に裏切っていった。

 

 まず理想主義者の黒人が早々とギブアップする。大した理由もなく主人公に対して「言い過ぎたよ。俺に非難する権利はない。」などとほざき妥協を図る。それでも学生か!ボーイズ・ビー・ブルー・スメル(英検3級)!青臭くない学生などコンドームを常備しないゲイほどの価値しかない。

 

 そして主人公は特に心動かされたような描写もないのに宗旨替えして「悪を倒すんや」思考に染まって元気モリモリ、マッチョマンの変態と化す。もう勝手にしろよと吐き捨てた私を誰が責められるだろうか。

 

 ラストでは悪徳企業の黒幕のオバハンが登場して酸性雨で焦がされて死にかける。彼女に対して主人公は叫ぶ。「母さん!」もちろん彼女が母親であることがわかったところで何も変わらない。それ以上でもそれ以下でもない発言である。

 

 この唐突な陳述は特にストーリーを深堀することなく、やまびこの様に虚しくリコシェイするのみであった。

 

 サブキャラのムカつく性格した体育会系のヒゲ親父が終始酸性雨によるダメージでデンジャー状態になっているところだけが笑えた。最後に、米軍調査団が戦後に旧日本軍の戦車を分析した際に残したコメントを記して筆を置きたい。なぜか本作を見ているときに脳内をよぎった。人間の記憶とは不思議なものである。

 

  ーー特に注目すべき技術的特徴は見当たらない。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上