ストリート・レジェンド
あらすじ
「ユタ州への熱いネガティブキャンペーン」
本作の男主人公は試合興業のプロモーター。借金まみれの両親の元で育った人間不信の拝金主義者。女主人公はボクサー。かつレズビアン。彼女はユタ州の厳格な家庭出身のため勘当される。
彼らは違法賭けボクシングで大金を得て精神的に解放されたいと望んでいる。そんな彼らの心情は割れたトイレの鏡やホコリで汚れた窓越しの窃視といった手法で表現される。
このように優れているところもあるのだが、それでも描写不足は否めない。具体的には登場人物に感情移入するための背景描写が足りないのだ。
たとえば男主人公について。彼は金銭的に恵まれなかった家庭に育ったため拝金主義に走る。これはわかる。しかし彼は地元で元カノを孕ませて逃亡する。こんなのカネ関係ないただのクズじゃないか。これに関するエクスキューズは無し。もちろん1mmも同情できない。あげくラストではサンタクロースよろしく孕ませてできた子どもと仲良く遊ぶのだ。もちろん責任は取らない。徹頭徹尾のヤリ逃げである。去勢とは彼の様な人種のために必要な言葉だ。
女主人公については彼女を追放したユタ州についての描写が欲しい(恐竜とモルモン教以外に何かあるの?)。例えばそれは彼女を圧迫したまとわりつくような重苦しい保守的な空気などである。それ無しにただ一言「私レズビアン。ユタ州は私を迫害した。」だけではパンチ不足ではなかろうか。ボクサーだけに。主人公たちは興業のため全米を回る。ユタ州に立ち寄ることは不自然ではなかったはずだ。
ボクシングのシーンについて。女優を気遣っているのがありありとわかる、余裕を持った間合いで放たれる大振りパンチからは緊張のきの字も感じることはできない。しかしメイクは優れていた。顔面アザだらけの、ギラギラした闘志を瞳に宿したアマゾネスが、男という名のウドの大木をどつきまわしていくというデッサン。アクションは微妙とはいえ絵面は見れる出来に仕上がっている。
総合評価・星3つ(500円の価値有)
★★★☆☆
以上