スーパーカブ
あらすじ
主人公は悪の道に堕ちた友を取り戻すために90ccのスーパーカブを駆り悪の大型バイクと渡り合う。上っ面の設定は良いのだ。では肝心の中身はどうか?本作より繁華街のゲロのほうが匂いがあるだけマシといえばそのレベルはお分かりいただけるだろう。
本作の失敗は「劣位」から生じるカタルシスをまるっきり引き出せていない点にある。より具体的に言えば「弱者が強者に挑みこれを負かす構図」が持つ魅力が皆無なのだ。
ではその魅力とはどんなものか?例えば獣王クロコダインは竜騎将バランを相手に援軍到着まで防御戦を展開し戦略的勝利を収めた。例えばロック岩崎はF-104Jで米軍のF-15Cに撃墜判定を与えた。これらの戦いから見出せるものは何か。それは劣位を回天させるだけの精神的ないし技術的要素である。魅力はそこに見出せると私は愚考する。
では本作はより強大な相手と戦うためにどのような精神的・技術的要素を搭載したのだろうか。それは「スーパーカブにヤベぇエンジンを載っけてブッちぎるぜ!」である。は?である。ふざけるなである。地獄に落ちろである。
突然ドラえもんの秘密道具のように「(チャッチャラー)ヤバいエンジン~(核爆)」が登場しすべてを解決する。技術も精神もクソもない出来合いのアイテムをぽっと出して終わり。私は本作のストーリー担当者の健康を憂えた。本作はきっと地獄のような過密スケジュールで製作されたに違いない。そうでなければこんな愚かな展開になるはずがない。
結局ヤバいエンジン(失笑)によるパワー勝負に持ち込むのならばなぜレース用車種ではない実用車のスーパーカブを選んだのか?役者にしろ小道具にしろそこにそいつが必要だからキャスティングされるはずではないのか?スーパーカブでなければならない理由、本作においてそれは地平線の彼方へカタパルト射出されたようだ。
主人公の魅力的な人間設計も本作の価値上昇に一役買っている。彼は学校にも行かずにブラブラバイクで調子をこきつつ叔父のキャッシュカードで500万円の借金を建設した純粋無垢な神の子羊である。もちろんケータイ料金は叔父に払ってもらっている。うーん、これが自立。フロンティアスピリット。この誇り高き21世紀型自立人材がヤバいエンジンに跨ってすごす82分。非常にエンターテイメントであることは自明である。
総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)
★☆☆☆☆
以上