ワンコイン・ムービ-レビュー

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プロジェクト・グレイ

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あらすじ

「Vive la France ! 」

 

 ガキの頃に宇宙人に拉致られてチップを埋め込まれた男。そのチップは「恐怖」に反応する何かヤバいアイテムであり、ロシア軍はそれを「史上最強の心理兵器」と呼称する。

 

 恐怖が!恐怖が!と散発的に強調されるこのテーマであるが、残念ながら本作において恐怖らしい恐怖が描かれた痕跡を見出すことは不可能である。その代わりに描かれる本作の主軸は「主人公(男)、プロポーズに成功するもマッハでカノジョに裏切られたの巻」である。元カレの上で腰を振るカノジョとその他いてもいなくても何の影響もないモブを数名、順調に射殺するその風景からはもちろんのことながら恐怖のkの字も出てこない。

 

 この下世話な下半身事件はなぜかチップのせいにされる。やがてロシア軍が現れて主人公を精神科から拉致してチップを摘出する。すると突如宇宙人が来襲する。いい年をこいた中年男性がチープな質感の銃火器を振り回している。彼らを彩るはケバケバしいCGのマズルフラッシュ。「オッサン達が叫びながらモデルガンを振り回した後で無理やり合成したんだろうな」と即座に判断可能な質の低さが視聴者の心に哀れみを植え付ける。なんやかんやで主人公は宇宙人に捕食されて感涙のフィナーレである。

 

 恐怖をテーマに据えながらも、上映時間81分の内60分近くをカノジョの浮気劇に費やしたあげく、ラストでは唐突にロシア軍が玉砕するというこのムービーは一体何を表現したかったのだろうか。それは2つの構成要件から成る。1つ、浮気といえば何であろうか?もちろんそれはフランスである。2つ、ロシア軍玉砕はロシアへの恨みが反動となった願望である。フランス+反ロシア。ここまで言えば自明だろう。すなわち本作は失敗に終わったロシア遠征に対する市民の目を覆い隠すためにボナパルティストによって製作されたプロパガンダ映画なのである。私は本作をそこらの量産型ゴミ映画などとは微塵も思っていない。本作は偉大なる皇帝陛下への忠誠を示すべく、200年以上の時を超えて立ち上がった誇り高きVIEILLE GARDEである。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上