ワンコイン・ムービ-レビュー

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アルティメット・ブレイク

あらすじ

「警備員をバカにするな」

 

 廃炉間近の原発に攻撃を仕掛けてきたテロリストが警備員のオッサンに射殺されるという本作はキャラ無しアクション無しの大迫力巨編である。

 

主人公のオッサン警備員は「俺はギャンブルに弱いんだ」とキャラ付けを試みるが、彼は手にしたピストルでテロリストを的確に射殺していくジャクソン二等兵であり、特に悪運に見舞われることも無く話は進む。

 

テロリストの幹部クラスについて。リーダー格の銭ゲバと、思想信条のためにテロリストになったエンジニアの2人がいるが、金銭に起因するトラブルが起こるわけでもなく、思想信条とやらが明らかになることも無いため、結局彼らは銃を撃って殴りかかってくるサンドバッグ以上の何物でもない。

 

 偶然原発に視察に来ていて巻き込まれた地方議員のオッサンが「俺が先に行くぜ!」的に突撃したかと思えばその刹那地雷を踏んで秒殺されたシーンでは腹を抱えざるを得なかった。私は日常生活において救えないレベルの人間の行動を評するにあたって「笑いながら地雷原に突っ込んでいる」と表現することがままあるが、まさかそれを100%体現する死にざまを表現してくれる作品に出合えるとは思わなかった。出会ったから何だと言われれば特に得られたものは無いことは自明である。

 

 キモオタ視点としては、オッサン警備員が100mオーバーの距離を隔てた動く人間大の標的を38口径拳銃(ベレッタ92FSか、あるいは一瞬見えたスライド形状からトーラスPT92の可能性も捨てきれないが見返す気はない)で狙撃しようとするというシーンが気にかかった。ピストルの実用射程などどれだけ寛大に見積もっても25m程度だと思っていたのだが、それがキモオタ的な教条主義に起因する思考の硬直である可能性を捨てきることはできないため、評価対象とすることは避けた。映画はフィクションですしね。

 

 私が唯一イラついたのは主人公の職業、すなわち警備員に対する職業差別ともとれる表現がぼちぼち出てきたことである。「ずっと警備員なの?」「警備員にしかなれなかった」といったそれらは、確かに1つの真実ではあるかもしれない。ハローワークの統計を分析するまでも無く職業に人気不人気はつきものだ。そこになぜ過剰気味に噛みつくのかと問われれば、それは私の人生経験に起因する、論理もクソも無い感情論であると断言する。

 

 私は総合病院の医療事務職として勤務していたことがある。通常残業100程度に加えて夜勤当直も合わせれば毎月150時間程度のサービス残業を課せられるやりがいたっぷりのお仕事である。その夜勤当直の時に私は何人かの警備員と仕事を共にする経験を得た。良い警備員:悪い警備員の割合は2:3といったところだろうか。悪い警備員の話などネットの落書きにいくらでも転がっているであろうから、ここでは良い警備員について語りたい。

 

 彼は「警備業はキツい」と愚痴をこぼしながらも仕事で手を抜くことは一切なかった。当直室にゾンビの様なツラをして入ってきた私にお茶をすすめ、救急患者来院時には共に受け入れ業務を行った。「警備員の給料は安い」とボヤきながらも「息子を医療系の専門学校に入れることができた」とほほ笑む彼の横顔はそこらの宗教野郎が書きなぐったマリア像など遥かに及ばない尊さであった。

 

 結局私は手取り14万のために朝の7時から夜の3時まで働く生活に嫌気がさして退職を決意するわけである。上司には「くたばれ」と言い残し、世話になった警備員には「ありがとうございました」とお礼を述べる。すると彼は「ちょっと待っててください」と言って警備員専用の詰め所に走っていった。戻ってきた彼は「テクノカットさんに渡したいものがあるんです。つらいときに読んでください。」と言って1冊の本を差し出した。池田大作著『人間革命』である。作り笑顔で受け取った私の心を生ぬるい風が吹き抜けていった。「宗教であれなんであれ、救いが無ければ人は生きていけないんだなあ」と。

 

 話がとっ散らかったうえに、上述の話はかなり前の記憶を思い出しながら書きなぐったものであるため(推敲はしたが)、不正確な部分や美化された部分がちょいちょい混ざっていると想定される。だがそれでも、決して愉快ではない環境で苦しんでいた私に、できる限りの気配りをしてくれた警備員がいたということは断固とした事実である。よって警備員に対する不当な下方修正評価は容認できない。本作は正当に評価すれば星2つが妥当であろうが、映像文法もクソも無い私の感情論によって、本作から星を1つ剥奪することとする。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上