あらすじ
「夫婦レスキュー ←地上でやれ」
燃料系統とエンジンがヤバくなったスペースシャトルが墜落して海底に沈んでしまった・・・。その恐怖について、本作は海底の恐ろしさに係る描写を放棄する大胆な手腕を発揮する。登場人物を押し包んでいるはずの漆黒の海水はその存在を粛清され、替わりにカメラが映し出すのは明るい船内、平時と変わらぬ白色灯で照らされた、安っぽいセットである。その安っぽい平穏が緊張の弦を弓から外そうともがいている。
物理的な安っぽさに文句を言っても始まらない。そうだ、人間ドラマに目を向けよう!人間の魂まで安くなるわけではない。それに宇宙飛行士と言えば各方面から集められた精鋭ではないか。プロフェッショナルである彼らの誇りと葛藤は、圧倒的な緊張を視聴者に提供してくれるだろう。
予想は裏切られるために存在する。本作のストーリーラインは「夫婦喧嘩」である。ヒロインである女性飛行士は夫と痴話喧嘩して離婚まで考えている。そこに隊長が付け込み、「俺と一緒になれよ」とアプローチをかける。しかしヒロインの夫が救難ポッドで助けに来た!ヒロインは「やっぱ好きやねん」と豹変し、隊長はふてくされる。なんやこれ。ティーンの恋愛か。いやそれ以下だ。非常に愚かと言わざるを得ない。
スペースシャトルという事業スケールの大きさと、オッサンオバハンの痴話喧嘩というスケールの小ささが対比されることで、より一層喧嘩の矮小さが強調される。そんなものを強調してどうしたいのだろうか。
「海の深さ=夫婦の愛の深さ」と取れるのではないか、などと解釈について最大限努力したが疲労に終わった。「ケンカしたわ→助けに来たぜ→愛してるわ」などと深さもクソもない三段論法をどう評価すれば?
50口径重機関銃に.22ロングライフル弾を装填して何食わぬ顔をしている兵士がいたらどう思うだろうか。本作はそういう作品である。
総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)
★☆☆☆☆
以上