郵便処刑執行人
あらすじ
「郵便配達兄貴がめっちゃ不真面目」
お姉ちゃんのことが大好きだけど上手く言葉にできなくて震える的なシスコン弟。ある日、彼はお姉ちゃんと自分の親友がキスしてるところを目撃しちゃって超ショック。追い打ちをかけるように変な郵便配達兄貴が「お前実は養子やぞ。俺はお前の兄貴やぞ」と情報提供。やけくそになったシスコン弟は郵便配達兄貴と一緒に手紙を開封して改ざんしたり小包をぶん投げて破壊したり…というのが本作の流れである。
タイトルほどではないにしろ、郵便配達兄貴は本作で根暗に大暴れする。前述の行為に加え、犬の糞に手紙を刺したり小切手入り封筒とポストを接着剤で引っ付けたり…。なぜこんなことをするんだ?この問いに彼は「特権だからさ」と答える。
「特権」と「郵便配達」この2つのワードから連想されるのは「通信の秘密」であろう。その本質は国家による圧政からの解放、すなわち国民は国家との関係においてその干渉を受けない消極的な地位を獲得しているということである。よって本作は自由権の崩壊を描くことで自由の国アメリカの崩壊ないし腐敗を表現しようとしているのではないか?残念ながらこれは好意的に過ぎる解釈であると結論する。
シャワーで、バスタブで、ソファーで、プールで、モブの女優が乳を出す。こうした無駄なポルノシーンの定期的投入もさることながら、なにより決定的なのが上述解釈に基づいた場合ラストの説明がつかないところである。シスコン弟は姉を助けるために郵便配達兄貴を刺殺して悲嘆にくれる。「実の兄を殺してしまった」と。圧政を打倒して悲しみに暮れる革命戦士というのは奇妙な話ではないか。結局、本作は「こんなキチガイが近所にいたら怖いでしょ」的ホラーとみなす方が賢明である。
本作の作りそのものは非常にガタガタしている。シスコン弟視点と姉視点と郵便配達兄貴視点がめくるめく入れ替わる。ぶつ切りで。テンポが悪い。シーンによってはピントが合ってすらいない。
登場人物は比較的マシだった。ピックアップしたいのはシスコン弟の恋人だ。彼女は「悩みがあるなら話さないとわからない」「私は何があってもアンタの味方よ」とシスコン弟を励まし、頭一つ以上大きい郵便配達兄貴に対して「ナメた真似してんじゃねーぞ」「恋人を守るのは当然」と宣戦布告する。女は守られる存在ではない。彼女は肉食系女子の模範である。
総合評価・星2つ(500円の価値無)
★★☆☆☆
以上