ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

バーニング・ブライト

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あらすじ

「女は高潔男はクズ」

 

 母親が死んだ。主人公の女学生は残された自閉症の弟を看護しつつ家庭の仕事もこなす。当然学業は苦境に追い込まれ奨学金の受給も難しくなる。

 

 ただでさえ苦しい状況の中、彼女は身内に裏切られる。父親(継父)に母の遺産をパクられるのだ。その金の使途は動物の購入。継父曰く「サファリパークをオープンするぜ!」とのこと。実に素晴らしい起業(笑)である。

 

 継父は「生命保険が欲しいんじゃ!」と欲望を抱く。姉弟を家に閉じ込めて、その中に虎を放つのだ。しかし姉弟は虎の猛攻を耐え抜き継父は死ぬ。ラストで虎に腹を掻っ捌かれて「内臓おいしいねん!」状態と化す彼の遺骸を見てこみ上げる感情はSourireである。

 

 継父のゴミクズめいた行状、仕事を口実とした男の無軌道性。「家」の維持どころか破壊である。「家」という結合が第一!マチズモ乃至保守派の言いがちなフレーズであるが、じゃあ手前はどれだけ「家」のことを考えてるのと言いたくなるシーンの束。これらクソ継父との対比において女学生のタフネスは表現されるのである。

 

 それ以上に好感を持ったのは自閉症のガキに関する描写だ。彼は最初から最後まで逃走劇のお荷物でしかない。虎が迫る中「ワシは朝飯を食べるんじゃ!」とわめき、避難させるために体を触ると「Don’t touch me!」である。

 

 そこからは障害者を直視する、キレイごとではない、そういう視点が見受けられた。これがクソ映画だったら避難の過程で「障害者だからこその視点」とか「隠れていた特性」みたいな要素を下痢便の様に垂れ流してくると思うが、本作はそれをしない。

 

 女学生は見捨てない。障害を持つ同胞を、ありのまま、その負担を分かち合うという気高き選択肢を選んだ2人の足元は嵐でぬかるんでいるが、確実に先に繋がっている。

 

 本作の残念な点は、襲い来る虎が全然怖くないンゴ問題である。舞台が一般の民家ということでバトルフィールドが狭く、それに伴い身体運動のダイナミズムを欠かざるを得ないというところが原因だろうか。

 

 ただそれでもなんとか虎の強さを描写しようとしていた痕跡はわかる。終盤女学生は拳銃を見つける。本作を見たキモオタなら1秒でわかることだが、その銃はS&WのM10である。「.38スペシャル弾が猛獣に通じるわけないけどどうせ通じるんだろフィクション的に」と思っていた私の予想とは裏腹に、銃弾は虎に通じなかった。やったぜ。

 

 だから何だと言われれば、抗弁するすべを私は持たない。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上