ワンコイン・ムービ-レビュー

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パラダイスウイルス

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あらすじ

「島でウイルスがパンデミックでマジヤバイから抗体を作って一件落着する。」

 

 本作の筋書きは坦々と進んでいく。次々とウイルスにり患してゆく島民たち、彼らはパニックに陥り、暴動を起こしたり島からの脱出を図ろうとする。官僚組織と現場の意思不一致も問題だ。これらがコツコツと描写されていく様は好意的に見るならばマイクル・クライトンの小説『アンドロメダ病原体』の様だと言えるだろう。

 

 しかし残念ながら本作では群集のパニックが描けていない。脱出しようと試みる島民たちは沿岸警備隊に叱られてスゴスゴ戻るし、空港で起きた暴動については通信機から平穏な音声のやり取りが聞こえるだけ、それ以外ではタクシー運転手のオッサンがバグってピストル振り回して勝手に死ぬぐらいしかない。

 

 登場人物に目を向けよう。本作のMVPは新興宗教団体で教祖をしている固太りのオッサンである。彼は医者の反対を一笑に付し、自前の民間療法で第一感染者を治療してパンデミックの原因を作ったA級戦犯である。この描写から加持祈祷事件を連想するのは行き過ぎかもしれないが、本作が宗教の迷信性を強調するスタンスであると想定したことに罪があるだろうか。そう、本作は人々を苦しめる神に対して立ち上がった啓蒙思想の延長線上にある低予算映画界のフランス革命なのである。当然のことながら私のこの読みは大ハズレもいいところであった。

 

 物語も中盤、ウイルスに罹った教祖は「Ah~Oh~」と苦しむ。そして幾日か後、そこには元気にバタフライで泳ぐ教祖の姿が!どうやってウイルスを克服したのかと問われた彼は平然なアホ面で「神に祈ったからだ」とのたまう。んなわけあるかい。しかし彼は理性などどこ吹く風で「お前達も神に祈れ」「死ぬ奴は祈りが足りん」とAN-94ばりの高速2点バーストを叩き込む。なんやかんやで教祖の血から抗体が作られる。やはり神は偉大なのだ。試みてはならぬ。

 

 本作のもう一つの重大テーマは恋愛である。パンデミックの初期段階で感染したカップル。「私死ぬのね」「死なないさ」「愛してるわ」彼らは周りの人間がバタバタ死んでいく中愛を語る。女の方に至っては「海を見て死にたいの」とかほざいて病院を脱走する。たどり着いた海岸ではデブの女が「アアメェェェイジィィィングレェェェイス」と熱唱している。ここだけでもう失笑ものだったが、さらに海にはバタフライしてる教祖がいるんですよね。もう完全に笑わせにきてますよ神が。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上