ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

アルティメット・ランナーズ SKILLS

f:id:public-technocut:20180220154242j:plain

あらすじ

「マジで何を描きたかったの監督」

 

 わずかながらも、本作で披露されたパルクールのシーンはマトモなものであった。廃墟の中を自由自在に躍動しながら友人とペイントボールガンで撃ちあうシーンと、女を巡って街中を競争するシーンがそれである。本作で擁護できるのはこれだけである。

 

 役者が頑張ってパルクールしてるシーン、それを盛り上げるために投入される音楽と効果音はスターリングラード戦のルーマニア軍並みに頼もしい。コトコトと鍋が煮込みの音を立てるようなおとなしいドラム、バラエティー番組のツッコミ以下のショボい打撃音、これらが全体を通してダラダラと流れ、役者の努力をブチ壊しにしてくれる。

 

 主人公は「スキルス」という違法な異種格闘技戦に出場する。理由は警官である父がスキルスの元締めに撃たれ重傷を負ったから。主人公の男気は買うが、パルクールとは格闘技であったのか?どうやって人と戦うシーンを見せるのか、そこに関して本作が脳を使った形跡を私は見出せなかった。

 

 街中を映画やゲーム、マンガの登場人物よろしくスタイリッシュに突っ走っていくからカッコイイんじゃないんですかねこういう競技って。肝心の「街を走る」という要素を窒息させて無理やり対人格闘させたらどうなるか。疾走感は完全に昇天し、残ったのは身のこなしが軽いだけのお兄やんである。パルクールである必要が全く無い。これを悲劇と言わずして何と言おうか。

 

 バトルフィールドであるスキルスもお話にならない。「異種格闘技戦だからいろんな種目の奴が闘います」と言うが、スケボーだのモトクロスだのホッケーだのHIPHOPダンスだの、お前それのどこがどう格闘技なんだよという連中を大量投入してくる。

 

 もちろんちゃんと映像として魅力が演出されていれば文句は言わない。では本作において演出された魅力はどのようなものだったか簡潔に述べよう。スケボー=ボードを振り回すだけ、ホッケー=ストックを振り回すだけ、モトクロスに至っては自転車がちょっと映っただけである。HIPHOPダンサーはチョロチョロ頑張ってはいたが形勢を逆転させるほどの魅力は無い。これらを擁護することは不可能である。

 

 主人公達は戦いの中、女友達にスキルスが行われている位置を警察に通報してもらう。そしてラスボスである元締めとの対峙。父を撃った憎むべき敵である。この戦いではHIPHOPダンサーが射殺され、元締めは通報を受けた警察に捕まる。そう、主人公はラスボス戦でバトルしない。もちろんパルクールなど使われるはずもない。

 

 父の仇はどうなったんだ、これのどこにどうカタルシスを見出せばいいんだ、無い脳みそを絞りながら考えつつ見ているとエンドロールが流れ始める。バックミュージックは頭悪い系の5流ヒップホップである。唖然。これが文字通りとどめの一撃であった。

 

 0.01mmコンドーム以下の薄っぺらい設定の上で主人公が飛び跳ねているだけ、本作はスポーツをコケにしつつ役者の努力を無駄にした恐るべき人災である。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上