スネークトレイン
あらすじ
「古より伝わる呪術師が、妻に宿ってしまった邪悪な魂を追い払うために、その力を駆使して術をかけていた。しかしながら、邪悪な魂は妻を呪い殺し、無数のスネークとなって列車内へ消えていった…(パッケージより抜粋)」
体内でうごめく蛇によって苦しむ女性。額は汗ばみ、吐いた物には緑色の粘液が混じっている。何度も繰り返されるこの映像が本作の軸である。パッケージの様なモンスターパニックものではないなとの直感が脳裏を走る。その確信は登場人物の発言、「皆心に蛇を持っている」、によって補強される。本作は人間の欲の恐ろしさを描いた作品である。
苦しむ女性と本作の舞台である電車は対応している。すなわち電車は彼女であり乗客は蛇=欲望なのである。これは乗客を見れば一目瞭然だ。金欲しさに麻薬密輸の片棒を担ぐ旅行者、彼らの罪を見逃す代わりに性行為を要求する麻薬取締官、夫を尻に敷く恐妻もおまけにつけよう。そもそも蛇を列車内に持ち込んだ主役級の登場人物からして誉められた人物ではないのである。彼らが気にするのは自分たちの治療のみ。巻き添えで他人がどうなろうが列車がどうなろうがおかまいなし。
蛇によって苦しむ女性の肉体と連動するように列車は暴走する。中途半端に。ここが本作のイマイチな点である。「機関が故障して何かスピードがでてるぞ」というアナウンスと共にちょろっと列車の外観が映る、これが本作においては暴走と呼称される。欲によって翻弄される肉体を表現するに十分なエネルギーが列車にはあると思うのだが、ここはもっとアピールしてもらいたかった。
特にツッコミを入れて楽しむ余地も無い、まともな映画だったので喜ばしいのだが、自分がもし宗教の知識を持っていたら、欲についてもっと切り込んだレビューが書けたのではなかろうかと反省点を見出さねばならなかった。「宗教の入門書 For 映画好き」で何かいいのがあったら教えてください。Amazonでググってもいまいちピンとこなかったんで。
総合評価・星3つ(500円の価値有)
★★★☆☆
以上