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ナイトメア オブ サンタクロース

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あらすじ

「We Fuck You a Merry Christmas.」

 

 クリスマスが商業主義に毒されてワシは悲しい的な事を言ったのはいつの法王だったか忘れたが、本作はその商業主義によって捧げられた贖罪の山羊である。「サンタクロースの元ネタになった聖ニコラスは実は船でやってきた盗賊団のボスで、煙突から侵入して村人を殺戮し金品を強奪していた。ブチ切れた村人たちは夜襲をかけニコラス達を焼き殺したが、ニコラスは復讐の怨霊と化して満月の訪れる降誕祭の日にガキを拉致して大人を虐殺する。」

 

 教会の密室で男児にいたずらをする神父ですら、この設定を見ればインド人もびっくりだろう。本作の制作国はオランダ。さすがは売春と麻薬を合法化する国である。この国がイギリスに敗れず覇権国家となっていたらどうなっていたかは考えたくも無い。

 

 本作の主人公は低脳のヤリチン。彼は女の価値は体だけと言い切り、付き合っている彼女に処女をよこせと詰め寄る気品ある紳士である。彼は大した存在感も無くニコラスにビビり続ける。

 

 本作は主人公達登場人物には大した魅力は無い。ただ、ニコラスを中心として繰り広げられる周辺状況の展開が本作を秀作の地位に押し上げることに成功している。ニコラスはサンタの衣装を着てクリスマスの杖的な武器を呂布の様に振り回し、民間人や警察官、果てはMP5に防弾装備の特殊部隊員をも鎧袖一触で血祭りにあげる。ニコラスの部下としてよみがえった盗賊団のゾンビ達も戦列を組みブロードソードを振り回す。

 

 これに対応する警察も素晴らしい。そこらの適当な映画の様に、バケモノだウギャアアアといったバカはしない。現実的なのである。具体的に一例をあげればニコラスが街中で暴れるシーン、それをパトカーで追跡する警官は無線で「年齢不詳の男性が暴走中。移動手段は馬。現在何々通りを直進している」といった具合である。まるで警察24時。それらがサンタのクソ暴走と言う本作のミスマッチ的要素と上手くかみ合っている。

 

 後手に回る警察を嘲笑うかのようにニコラスは暴れまわり、水上警察や特殊部隊まで粉砕する。しかし、ニコラスに家族を殺された過去を持つ老刑事が主人公と共に爆薬を搭載したボートをニコラスの母船に特攻させ、事態は一応の収拾をみる。

 

 そしてエピローグ。市長と警察幹部が事件について総括する。「まあこうなることはわかってたんやけどサンタのイメージ崩れたらあかんから何もできへんよな。俺ら悪くないで。今回の事件の犠牲者は300人ぐらいやけど適当にごまかすってことでよろしこ」。そして行方不明となった児童たちはスクールバスの転落や小児科病棟の火事で死んだことにされ、ニコラスと戦った老刑事は児童殺害キチガイシリアルキラーの名誉を与えられるという悲惨なオチで本作は幕を閉じる。なお主人公は市当局から口封じとして5万ユーロの裏金をもらってウハウハである。

 

 ストーリーをみればどうなのよと思わざるを得ないことは事実であるが、老害ゾンビのサンタが現代社会を舞台に警察とバトルするというシチュエーション。本作はこれだけでお腹満腹美食倶楽部を創設したという点で他の映画と一線を画す優れた映画であると評価できる。発想が凄い。そしてその発想を出落ちにしない。本作制作関係者には素直にスタンディングオベーションを贈りたい。

 

 以下は作品の評価と関係無いキモオタの独り言なので無視してかまわないが、警察官の使用する拳銃がワルサーP5であるところが勉強になった。一度見ただけではわからず、「マカロフってことは無いよな、VP70かな?だとしたらラクーンシティだな」などと考えつつ一時停止して確認したらP5だった。P5と言えば昔ジェームズボンドが使ってたぐらいの認識しかなかったが、調べてみたらオランダ警察に正式採用されているとのこと。また一つ賢くなってしまった事をニコラスに感謝したい。

 

参考:ワルサーP5。

https://www.youtube.com/watch?v=IAyNcyXoYtg

 

 

総合評価・星4つ(ステキやん?)

★★★★☆

 

以上