ターミネーターX
あらすじ
「ネットで生まれたヤバい何かが人を殺しはじめた」
ストーリーか設定、このどちらかが多少なりともまともなら映画としての形は整うと私は考えている。しかしながら本作は漠然とした用語を適当に並べ立てて構成されたろくでもない筋書であり、その様は落っことしてグチャグチャになった幕の内弁当以下である。「ソース」「主」「違う観点」などといったワードを説明無しに繰り返し聞かされるたびに、自分は映画を見ているのか、それともカルト教団か怪しげなセミナーの勧誘を受けているのかわからなくなってくる。こんな心理戦を挑んでくる本作のファイティングスピリッツには嫌悪感を覚えざるを得ない。
主人公の男はポルノサイトの運営者として公序良俗の維持に貢献する善良な市民である。ある日彼がエロ画像の入ったディスクを見ると変なサイトに飛ばされ、「人類はゴミだから死ねよ」と言葉の暴力を浴びせられる。同時期に同じサイトを見た他の人々は殺人行為を次々と行い、それは社会現象にまでなる。
やがて主人公のもとにノースリーブのロングコートを着たクソキモい黒人が現れて「お前は狙われているぞ」とご丁寧にも情報を提供してくれる。誰に狙われているのか、どう対処すべきかについては情報を与えないところからは彼のスパルタ精神がひしひしと伝わってくる。そして主人公は安モーテルにてダンゴムシ型のロボットから襲撃を受ける。主人公はこの凶悪な殺人ロボットを、手近にあったタオルケットで包み込んで壁や床に打ち付けることでこれを撃退する。その迫力ある戦闘シーンはまさに古代の洗濯婦のごとき牧歌的緊迫感を視聴者に提供してくれることだろう。
その後主人公はキモ黒人と合流。その後アフロの兄ちゃんもメンバーに加わり、特に説明も無く謎のビルに潜入する。そこにはマリリンマンソンの出来損ないのようなオッサンがいて「人間をCDにデジタル保存したぜ」などと意味の分からない供述を始めだす。平時ならこいつを精神鑑定にかけるべきなのであろうが、ストーリーはそれを許さず、マンソンはアフロのピストル一発であっけなく死に、アフロは再登場したダンゴムシロボに殺される。
ダンゴムシロボから逃げ出すことに成功した主人公はキモ黒人とドライブをする。たどり着いた先の荒野でキモ黒人は唐突に「テクノロジーはヤベえんだ」と言い出すが、どう見てもヤバいのはこいつである。もう少し具体的にしゃべれないのかこいつは、と思っているとラスボスが登場。そのドクロの様なメタルフレームとドレッドヘアーを搭載したデザインは、かの国民的名作『ドラえもん』に登場するオシシ仮面のごとき前衛的サイバーパンクコーディネートによって視聴者をくぎ付けにする。ラスボスはキモ黒人を殺すという殊勲を挙げた後、あっけなく爆死した。ラストは主人公が、キモ黒人から受け継いだ「戦士のリスト」を手に荒野をウォーキングする背中を映してエンドロールである。
本作の敵である「ソース」「主」とはいったい何なのか?「戦士」とはいったい何なのか?人類はゴミだから死ねと断言し、ネット経由で殺人ウィルスをばら撒いておきながら、人類のデータをわざわざCDで保存するとはどういうことなのか?全ては謎である。なぜこんな映画の企画が通ったのか謎である。この映画に製作費を出した人間の思考回路も謎である。本作は謎だらけのツギハギ映像集であり、もはや本作については何も考えたくない。
総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)
★☆☆☆☆
以上