ワイルドグリズリー
あらすじ
「クマも生きてるんだよ!(偽善)」
デカいクマがアメリカの田舎町で人を襲うぜ!筋は非常に単純なはずなのだが、それに係るセットアップがいまいち意味不明なところが気にかかった。ご覧いただきたい。
捕獲されたクマを受け入れるには、都市部の動物園などはもはやキャパ不足に陥っていた。だったら田舎でクマを受け入れればいいじゃない!補助金も交付しちゃうぜ!これを受けた悪役は「クマを受け入れてマネーをゲッツしたらクマを処分しちまおう」と企む。ここまではわかるのだ。
しかし悪役たちは何故かクマを逃がす。処分せずに逃がすのだ。「いや、それはクマが逃げたから殺したというロジックを組み立てて正当化するためじゃないのか?」とも考えたのだがそれは成り立たない。なぜならクマが逃げたことで、悪役も一枚かんでいる観光業が大打撃を被ったからだ。
まとめるとこうなる。「補助金のためにクマを殺そう!いや、殺さず逃がすぜ!観光がオーマイガッデムで大損だぜ!」。こんなものを計画と呼ぶことができるならば太平洋戦争は芸術的完全犯罪計画だろう。
魅力たっぷりの主人公に集まるヘイトも本作の魅力の1つだ。彼は都会から田舎へ引っ越してきたモヤシボーイという設定だがロッククライミングを軽々とこなし野生動物探知機なるアウトドア装備も楽々操作しちゃうんだぜ。
彼の誇り高き人格が現れるのはクマに襲われるシーンにおいてである。周囲の人間の忠告をことごとくフルスイングでドブに投げ捨てた結果主人公はクマに殺されかける。そこにハンターが駆けつけて麻酔銃を構える。すると主人公は銃口とクマとの間に仁王立ちし演説するのだ。「やめて!クマさんは悪くないよ!」。童話の世界じゃないんだぞボーイ。しかし言われてみれば確かにそうだ。悪いのはクマではない。こいつの頭である。
なんやかんやで麻酔弾を撃ち込まれたクマさんは無事捕獲される。環境保護テロリストの主人公は保安官に語りかける。「クマさんはどうなるの?」。保安官は答える。「人を殺傷したクマだから殺処分」。そりゃそうだ。人の味を覚えたクマの恐怖。想像できない人はいないだろう。いや、いた。
主人公は「そんなのダメだよ!」とほざきだしクマを逃がす。そして何かをやり遂げたかの様な彼が太陽に照らされるところでエンドロールが流れる。逃がす行程が全く描かれないというのもポイントが高いですねえ。
俺は正しい人間だとわめきちらし周囲に迷惑をかけまくる確信犯がもたらすストレスを感じたいという方は本作を購入するといいだろう。フィクションだからこうして笑い話にできるが、現実では出会いたくない人種である。
総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)
★☆☆☆☆
以上