ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

S.W.A.T. vs デビル

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あらすじ

「変なひねり入れずに作ってくれれば良作だったのに!」

 

 この世全ての悪の原因、それは俺だ。そうつぶやいた悪魔が神父に乗り移る。燃え盛る告解室をバックに闇堕ちした神父が胸の十字架を引きちぎる。このオープニングを見た時には心が躍った。

 

 ストーリーは単純。とある精神病院で暴動が発生したため、鎮圧のためにSWATが出動する。彼らの装備はしっかりしている。鎮圧が目的だからショックガンを携行するという設定をいいことにオリジナルデザインのわけのわからん銃を持たせることなく、きちんとダットサイト装着のTAR-21やMP5kを装備させ、丁寧に施設内をクリアリングしていく。

 

 舞台となる病院も素晴らしい。暴動直後の煙、灰、埃、汗、それらが目から匂ってきそうな薄暗い空気。不気味な暖色照明にチロチロと輝く炎。錆びた医療器具。病室の壁には血で描かれた絵が張られている。これらの雰囲気はサイレントヒルバイオハザード2を足して2で割った感じといえば伝わるだろうか。

 

 闇落ち神父に印を刻まれた囚人たちが悪魔化して次々と隊員達を血祭りにあげる。バリケードを張って阻止射撃を試みるも彼らには通用しない。しかし主人公のチリ毛オヤジは闇落ち神父を道連れにして焼却炉へ突撃して倒す。ここまで見ればB級映画としては十分な出来だといえるだろう。

 

 しかし上で紹介した物語、この映像は実は映画会社に持ち込まれたフィルムなのよというのが本作の設定なのである。従って本作上映中、映画会社の編集社員がフィルムを見ながらグダグダうっとおしい合いの手を入れてせっかくのいい映像を見る環境をズタズタに粉砕してくれる。映像についてガタガタぬかすのは視聴者の特権なんだよファッキンクライスト。

 

 「さっさと撃てよこいつら」「いまセリフ噛んだぞ」「隊員の階級に巡査部長が多すぎて区別できねえ笑」などという作中へのツッコミだけなら寛容の美徳の名のもとに恩赦に処そう。しかし「彼女とはそれからどーなのよ?」だの「結婚はヤバいぞ。俺は結婚してから太った」だの「毎年クリスマスは雪が降って嫌だ」などという愚にもつかないオッサンのグチを延々と聞かされるというのは一体全体どういうご褒美なのか。あげくどう考えても必要のない会社運営のシーンまで挿入される。なんだ経営学の授業でもしてくれるのかと思いきや、社長が獣姦の容疑でFBIに逮捕されただけである。これがホーソン実験の失敗というやつか。職場の物理的環境によって生産能力は左右されるという仮説。従って獣姦が奨励されれば生産能力は向上するはずであるが、そうはならなかった。物理的環境だけでは仕事はできない。人には社会的承認が必要なのである。経営学者の方々がこの文を見てくれたらスタンディングオベーション間違いなしのクソ解釈、書いていて虚しくなってきた。

 

 本作は全体的な構成をみれば立派なクソの仲間入りである。しかしながら、それでもきちんと手を抜かず、「フィルム」を作り上げたスタッフ、特に美術担当には敬意を表したい。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上