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インベーダーズ ジェネシス:創世記

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あらすじ

「雰囲気映画(雰囲気があるとは言っていない)」

 

 核戦争後の荒廃した世界で人類はまだ死滅していなかった。主人公のオッサンは「危機」から街を守る「デルタ部隊」のオフィサーである。最強の戦力であるデルタ部隊。スウェットの上に迷彩柄のベストを着こみモトクロス用のヘルメットを被った彼らは銃を握りしめオフロードバギーに搭乗する。その様はまさにヒャッハッハッ水だーッ!!食料もタップリもってやがったぜ!!である。文明荒廃後の装備・練度不足はやむを得ないのかもしれないが、それが野盗にしか見えない精鋭部隊を作り出すエクスキューズにならないのは自明である。

 

 オッサンは罠にかけられて街を脱走。反逆市民の一団と行動を共にする。しょうもない小規模バトルの末に、街のお偉いさん(ハゲ)から驚愕の事実が告げられる。それは「危機なんてないんや。戦時非常体制のまま部隊を運用するほうがいろいろと都合がよかったんや」という権力濫用である。

 

 危機を煽り警察行政を強化濫用し市民を抑圧する。9.11を境に始まったテロリズムとの戦いに纏わりついて離れない黒い三段活用である。ではこの重厚なテーマを本作はどう調理したのだろうか?

 

 行政の横暴は描かれる。市民を銃撃する部隊のシーンが申し訳程度に流される。それだけである。市民の悲劇は描かれる。部隊に銃撃される市民のシーンがエクスキューズとして流される。それだけである。1つのシーンで2度おいしい!駄菓子屋は今すぐ本作を納入するべきである。

 

 評議会という街を支配するシステムや街のお偉いさん(ハゲ)のキャラや銃器の重さなど権力側の描写に有用と思われる材料をそろえながらそれをむざむざ放置することによって主張を壊死させる斬新な試みが評価に値するかと言われれば選択肢はないであろう。

 

 抑圧される側の市民についてもロクな描写がない。主人公とチンタラウォーキングするその姿は金魚の肛門から垂れ下がる汚物の様で実にアクアリウムである。

 

 ラストはピリオドの効いた「俺たちの戦いはこれからだ!エンド」である。頼むから続編は存在しないでほしい。

 

 御大層なテーマを選ぶだけなら中学生にもできることである。そのテーマに係る主張、表現、これだけは言っておかなければならぬという製作陣の魂を、本作から感じ取ることはできなかった。パッケージに躍る「未来など望んではいけないのか…?」というコピーが私の鼻先をくすぐっていった。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上