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ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

デュアル・マトリックス

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あらすじ

「インターネットは、とてもこわいなあとおもいました」

 

 犯罪者が増えすぎて警察や特殊部隊が出動しても対応しきれない世界となった近未来。この事態に対処すべく政府はヴォルテックスというシステムを開発した。これについて明らかなのは、犯罪者を厳重に処罰するシステムであるということだけである。

 

 ところで刑罰というものには様々な目的があることは皆さんお分かりだろう。その1つが威嚇力である。誤解を恐れず簡潔に言えば「こういう事をすると、あなたはこういう罰を受けますよ」ということを明らかにしておくことで犯罪を抑止する趣旨である。しかしながら、このヴォルテックスは前述の通り「ヤバいことをすればなんかヤバいところへ送られるらしいぜ」程度の説明しかなされていない。こんな曖昧な制度で犯罪を抑止できるなら、刑事政策学者の存在意義など湯船に浮かぶ陰毛以下である。

 

 主人公は夜の危険地帯をチンタラ歩いていたら強盗に襲われるマヌケ野郎である。彼は強盗ともみ合いになった末、強盗のピストルを暴発させ殺してしまう。主人公は正当防衛を訴えるが、裁判所の「知らんわ」という公正な司法判断によりヴォルテックス送りとなる。

 

 ここでヴォルテックスの全容が明らかとなる。ヴォルテックスの住人は程度の差はあれ皆犯罪者。その中で主人公はピストルを与えられ、1週間に1人決められたターゲットを殺さなければ自分が殺されるという罰を与えられる。ガイドとしてついてきた初老のオッチャンは「1回殺っちまえば簡単だぜベイベー」とアドバイスしてくれる。ターゲットは主人公の隣に住む爺さん。見た目は好々爺だが、過去17人をぶっ殺して食べてヴォルテックス送りになった変態の鑑である。

 

 それでもなお殺しをためらう主人公。変態ジジイがナイフで襲い掛かってきても彼は発砲しない。ガイドのオッチャンが「撃て!」と叫びまくるが「俺は元々無罪だ!俺には人を殺すなんてできない!」と最後まで殺人を拒否する。

 

 すると不意に主人公はヴォルテックスから抜け出し現実へ戻る。するとガイドのオッチャンが出てきて「俺は検察官だ。君の行動を仮想現実で観察した結果無罪と判断した。」と述べ主人公を釈放する。つまりヴォルテックスは大掛かりなウソ発見器だったのだ。

 

 そして主人公は家に帰って嫁さんとSEX、その後庭をブラブラ散歩して平和にラスト。かと思いきや、いきなり彼の周囲が暗転し、変態ジジイの顔がサブリミナル放映されつつ、ガイドのオッチャンの「撃て!」という声がリフレインしまくる。主人公はパニック状態に陥り発砲してしまい変態ジジイを射殺してしまう。そう、釈放されたと思ったのも実は仮想現実だったのだ。

 

 そして検察官はつぶやく。「結局発砲しやがった。人間はクズだ。どうしようもない。」そして主人公は終身刑になりハッピーエンドである。

 

 ファッキンクライストとしか言いようが無い。大した捜査もせずに主人公を仮想現実にブチ込んで心身に負担をかけ、その中で検察官が殺人を教唆するのである。その重圧を耐えきった主人公に対して更に精神攻撃の乱舞を仕掛けて心神耗弱状態に陥らせるという鬼畜ぶり。人間はクズだ、などと検察官はどの口で言えるのだろうか。

 

 本作は、ヴォルテックスなるクソ制度を法制化した立法府、フーキエ・タンヴィルのごときハイレベルな司法府、殺人を教唆する行政府、この3つをメニュー化したハッピーセットである。こんなものを売り出した日にはマクドナルドは倒産であろう。

 

 これだけでもうすでに胸やけがしているのだが、このDVDの上映時間はわずか75分。そして上述のヴォルテックスの物語はその内の45分に過ぎないのである。では残り30分には何がつまっていたのか?簡単に説明しよう。

 

 まずイントロで「この映像はなんちゃらかんちゃらムービー専門学校の学生がつくりました」というメッセージが流れる。私の心境はもはや人の領域を超えざるを得なかった。もう何も怖くない。そう覚悟して歯を食いしばり視聴を続ける。あるゲーム会社のおっさんが「刑務所にハッキングかけて囚人のデータを盗んでそいつらを敵役にしたシューティングゲームを発売したら儲かりまっせ」と提案、社長はGoサインを出す。しかし刑務所に入れられていた囚人は「撃ち合いなんかしたくねえよ」と団結し、プレイヤーと平和な世界を築き上げる。ソフトを購入したユーザーは「これのどこがシューティングやねん」と怒りソフトを叩き壊し、ゲーム会社の構成員はお巡りさんに両手用アイアンブレスレットをプレゼントされ自分たちが刑務所生活を送ることとなる。これが全てである。

 

 ただひたすら心を殺した。それが視聴後の感想である。前半では三権分立をコケにした冤罪作成情熱大陸を見せられ、後半では追撃を掛けるような出来の悪い映像を拷問の様に見せられる。この商品を市場に流して金を得ようと構想した資本主義の豚共は今すぐに懲罰大隊送りにして東部戦線の地雷原を進ませるべきだと叫んでも過言ではないだろう。

 

 

総合評価・星5つ(Ce n’est pas Dieu possible)

★★★★★

 

以上