ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

モンスターズハンター

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あらすじ

「暴力は何も解決しない!(大嘘)」

 

 ガキの頃に両親と妹をモンスターに惨殺された主人公はそれ以来自分の感情を制御できないイライラ系男子に成長して社会に絶賛大迷惑をかけて生きていた。カウンセリングに何度も足を運んではカウンセラーに逆ギレしたり配管工の仕事をしながら夜学に通ってるぜアピールといった必要以上にダラダラとした1時間近いセットアップを見ていると、夜学の先生が無事モンスター化する。主人公がそれを斧で倒して一件落着。その後・・・世界中を旅してモンスターに白兵戦を挑む主人公の姿が!「あれからボクは変わったんだ。もうイライラなんてしないよ(世界丸見え風に)」。

 

 この映画がどんな作品かをもっと直截的に説明するならば「ロケが簡単な深夜の校舎でゴム製のモンスターを殴る」だけの量産型低予算映画である。これが撮りたいという執念よりはこれしか撮れなかったという現実の側に天秤が傾いた作品であり、軽く見積もっても本作を視聴した人類の7割はその翌日には本作の内容をきれいさっぱり忘れている、そんな類の映画である。

 

 本作が失敗した最大の原因はロジックの不成立、すなわち主人公が過去のトラウマと向き合っていない点に求められるだろう。過去のトラウマでイライラ症になったがモンスターとの戦いにより復讐への端緒をつかんだ彼は回復への軌道に乗った!と推測することはカンタンだがそれは贔屓目に過ぎるだろう。作中においてそれらロジックのケツ持ちとなってくれる表現は見当たらない。せいぜいカウンセリングのシーンでカウンセラーが「過去になにがあったかが大事やで」と発言するぐらいであるが、主人公はそれにすら背を向けている。

 

 主人公の精神的成長に係る表現を欠いたまま進んでいく物語、贔屓目や忖度を排除し見えるものをありのまま捉え本作を解釈するならば「自分と向き合う勇気のない奴がその場のノリで戦ったらなんか勝手にイライラが治りました」というストーリーテリングに収まるだろう。こんなもののどこに人の心を動かす力があるというのだろうか。暴力でトラウマ解決!というのなら本作の主人公は別にモンスターと戦う必要などない。アリの巣に水を流して全滅させるとか、タリバンに入って市民の背中を撃つとか方法は無限にあるだろう。

 

 暴力は地球を救う。割と現実でもそんな感じする時あるよねと嫌な気分になりつつ筆を置く。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上