あらすじ
「エイリアンがやってきて地球人は地球から出ていけと主張する量産型バトルドーム」
エイリアンがやってきた。(中略)米軍は壊滅する。なんやかんやで地球人はエイリアンを打ち倒す。その手法はゴーレムみたいなツラをした女大統領が「病原菌をわが身にまとってエイリアンと握手してくれるわ」と叫び自爆攻撃をかますというなかなかロックなラストである。
本作の楽しみ方は2つある。1つは民間防衛映画として見ることだ。『民間防衛』。そう、スイス政府が出してるあの赤い装丁の本である。エイリアンは「飢餓に苦しむ民に食料を与える」「病に苦しむ民に先端科学治療を与える」と誘惑する。エイリアンの甘言にのせられて民は困惑、エイリアンは善玉だと主張しだす輩も出てくる。
しかし結局エイリアンは拉致した地球人を宇宙空間に不法投棄していたのだ。これにブチ切れた大統領は冒頭のハンドシェイク作戦を立案するわけである。
「敵国は甘言をもって情報戦を仕掛けてくるから注意せよ!」というテーマに関して、本作とスイス政府は見解の一致をみているようだ。それ以上でもそれ以下でもない。
もう1つの見方はアンチ・ネット右翼映画として見ることだ。それは本作における国家主権の蹂躙と、甘言による論点操作に着目した鑑賞法である。
「日本統治下の朝鮮半島はインフラが整備され、朝鮮出身の国会議員もいた!」などとTwitterあたりで鼻息荒く皇国日本の八紘一宇を喧伝するジェダイの騎士を見たことがある人もいるだろう。幾万の日本軍人・行政官の全てが他国人の幸せを心から願って行動していたと確信しているその状況判断能力には敬服の念しかない。
ところで行動というものは、やる側に得があるからやるのである。ならば疑わなくてはならない。「私にこういうことをしてくれた!ステキ!」というのは未就学児の微笑ましい思考法である。行為というものは何の目的で誰に利益があるのか、それを重々考えて、人は抵抗しなくてはならない。
甘言を弄し他国の主権を踏みにじるエイリアンとはかつての某大帝国であり、それを肯定しようとする修正主義者であるネット右翼もまたエイリアンなのだ。何を言っているかわからない人もいるかもしれないが、俺はわかっているので別にいい。
本作においては正規軍がロクに登場せず、代わりに民兵が出演していた。小火器で武装したヒーロー気取りのオッサンたちは戦闘で全く活躍しない。エイリアンにボコられただけにもかかわらず、ラストでまるで自分たちが何かを成し遂げたかのように目を細める愚劣なシーン。その絵力は「勤勉な無能は銃殺せよ」との格言を体現しているように思えた。
総合評価・星3つ(500円の価値有)
★★★☆☆
以上