ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

幼狩 D#1

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あらすじ

マスゴミ無双」

 

 ロリコン野郎による児童殺害事件を軸に、バグったマスコミが大暴走!という心温まるハートウォーミングな本作の主張は単純明快である。それは「人が他者を理解することの不可能性」である。

 

 本作の中心部に陣取るワイドショーのレポーターは殺人事件の被害者遺族や関係者に焼夷弾のごとき突撃インタビューをブチかまし、その尊厳を踏みにじって飯を食う人格者である。

 

 そんな紳士たる彼の一人娘がロリコン殺人鬼に誘拐された。今までやってきたことが自分に降りかかってオーマイガッデムだぜ♪という話の大通りはマスコミの過剰報道というわかりやすい演出をもって他者を踏みにじることの醜さを表現している。

 

 ところで、本作においては変態ロリコン野郎に係る加害者側に関しても考察の余地がある。彼らは単純な悪役ではない。本作のロリコン野郎には幼少期に性的虐待を受けたことで人格が歪んでしまった可能性が留保される。

 

 自己の錬成を自由意思において果しえない幼少期における被虐経験によって人格が歪められた犯罪者を「道徳的に」糾弾することは可能であろうか。(公共の福祉の名の下に「法的に」可能であることは自明である)

 

 考えすぎではないか、あるいは拡大解釈の愚に陥っているのではないかとの疑念を捨てきれないまま書きなぐらせてもらうが、本作を解釈する焦点となるのは「道徳的に」の部分ではないか。言い換えればそれは自己の正義感だ。それは独りよがりであり排他的であり差別的である。そしてそれはネットが肥大した現代社会において病巣として現出していると考えざるを得ない。

 

 本作で登場するワイドショー関係者の様に、ネット掲示板だのTwitterだのブログだので、憂国の言論活動に時間を蕩尽しているジェダイの騎士たちを見たことがあるならばわかっていただけるのではないだろうか。人は他者を理解しない。理解できない、あるいは理解しないにもかかわらず攻撃精神は一丁前。敵を知らず己も知らず、そのくせ英霊気取りで白刃突撃を仕掛けていくその理性溢れる蛮勇は前大戦の栄えある皇国の守護者の様で実に不愉快である。

 

 勘違いしてもらっては困るが、私は本作におけるロリコン野郎を肯定乃至擁護しているわけではない。ただ1つ、結論として言いたいのは、議論の果てに相手に対して引き金を引くのならば、自分が殺すその相手を理解したうえで殺せということである。

 

 それこそが言論活動ではないだろうか?意見の相違は如何ともしがたい。対立は避けられない。だからといって自分の主張のみを独善的に叫び散らしたところで何にもならない。それは市民からの支持を得られないクーデターと化して己の心臓を軍法会議に捧げることになるだろう。

 

 他者を理解し、尊重したうえで対立する。相手を打ち負かす、手段が目的と化したディベートではなく、お互いの知識を高めることを目的とした建設的な議論を理想に掲げるような、そのような空間が醸成されることを願ってやまない。

 

 映画のレビューから多少逸脱した記事になってしまった感が否めないが、本ブログが私を絶対神に戴くカルト教団である以上、反省する気も後悔する気もない。

 

 最後に、「ネット上の無責任な言論ってお前それこのブログも入るんじゃねーか」との思いを抱いた方も多いだろう。まさしくその通りである。映画レビューなどとほざきながら、どれだけ映画を「理解」しているのかと言われればグウの音もでない。ああ、死ぬまでに、私はどれだけ理想に近づけるのだろうか。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上