ワンコイン・ムービ-レビュー

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キングダム・ソルジャーズ 砂漠の敵

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あらすじ

「忘れるな、俺たちが馬鹿なら現場が苦しむ」

 

 俺、イラクに正義と秩序を与えに行くんだ。アメリカを中心とする有志連合がそう言い残してドツボにはまったあの戦争のことはまだ記憶に新しいだろう。ラムズフェルド・ドクトリンにより編成された少数精鋭機動軍は対称戦において圧倒的な効果を発揮するも、その後に続いた非対称戦において治安維持に係る兵力不足を露呈。占領政策のまずさも追撃となりイラクはまさに大内戦時代。そんな中で街をパトロールするイギリス軍の兵士たちを描いたのが本作である。

 

 パトロールしてたらRPGで撃たれて上官が戦死しました。報復のために乗り込んだ村では証拠もないのに村人を拘束して連行しました。その後、基地内の独房でそいつらをボコボコに虐待しました。なんやかんやでその蛮行が上にバレて実行犯の下っ端2人だけが訴追されました。他の仲間はしらんぷりです。そいつらも巻き添えに告発したらリンチをうけました。

 

 見ているときはもちろん、こうして思い返して書きおこしてみても悲惨としかいいようがない。「大事なのは心だ!」と説教をかます軍曹が「今回の相手はテロリストだぞ」「今は特別な状況なんだ」「俺が指揮官だ」とバグりだし心を失っていく様は吐き気がする。あげく確実な証拠なしでの逮捕である。イラクに正義と秩序を与えに行くといっておきながらデュー・プロセスを全力で見逃していくその精神。

 

 イラク戦争の矛盾を描くのが前半ならば、後半は軍という組織の閉鎖性の描写に力を割いている。悪行であってもそれに加担しなければ仲間に後ろから撃たれるという特殊で命がかかった同調圧力。加担したところでいざ訴追という場面になれば自らの保身しか考えない戦友(笑)に上官(爆笑)。

 

 ラストではチンピラ兵士の口を借りてこう語られる。「偽善者市民共は俺たちの戦死には注意を払わず不正だけを騒ぎ立てる」と。当然私はこのメッセージは市民である私たち視聴者に向けられたものであると感じた。イギリス、そして我が国日本も国民主権に基づく民主主義国家である。ならば時の政権が犯した愚行の責任は私たちにあることを今一度自覚しなくてはならない。戦争は政治の一形態であり、最悪の外交手段である。そのような愚かな手段をとることに加担してしまったという自覚ははたして市民のどれだけが抱いているのだろう。インターネットの掲示板やSNSなどで安倍がどうの旧民主党の連中がどうのとジャーナリスト気取りで書き込んでいる愛国の勇者たちはその時々の政権の動向に対してどれだけの信念をもって毅然と行動したのだろうか。偉そうにほざいておきながら、私も愚か者の1人である。

 

 

総合評価・星4つ(ステキやん?)

★★★★☆

 

以上