ワンコイン・ムービ-レビュー

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ゾンビ処刑人

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あらすじ

「意識のあるゾンビがピストル撃ったりする」

 

 主人公の男性はイラク戦争に従軍し、戦死する。棺に収まり無言の帰郷を果たした彼は記憶や意識を保ったままゾンビとして復活する。彼は親友の力を借り普通の生活を取り戻そうと試みるが、通常の食事を受け付けることができずに吐血する。やむなく彼は病院から輸血パックを盗み糊口をしのぐ。

 

 女友達は彼の復活を知り「首を切ってもう一度殺すべき」と冷たく突き放す。良いとはいえない環境の中なんとか存在を繋ごうとする彼を強盗の銃弾が襲う。しかし彼はゾンビだから銃弾が効かない!そこで案が思い浮かぶ。「強盗を襲って生き血をすすろう!」。ついでにカネやヤクも奪っちゃうぜ。

 

 その後は女友達を殺したり親友もゾンビ化したり婚約者を斬首したりする。そのうち彼らは成敗した強盗から恨みを買う。親友は報復を受け斬首される。頭部だけになっても死ねない親友は主人公に頼みロードローラーで頭部を粉砕してもらう。

 

 主人公は自殺を試みるが、死ねない。自棄になった彼は無辜の女性を突発的に襲撃した後、警官隊から銃撃を受けハチの巣にされる。最終的に政府につかまった彼はイランに空輸されてエンドクレジットである。

 

 知能指数が高いとは言い難い主人公とその親友が刹那的にバカをやって滅びゆく様をボケーッと口を開けて眺めるというのも1つの鑑賞法かもしれないが、あまりお勧めはしない。選択肢はもう1つあるのではないか。それは「ゾンビ」を「退役軍人」として観ることだ。

 

 例えばそれはベトナム戦争のときにお茶の間を明るくした話題である。戦地から帰還した元兵士が社会から温かく迎えられている現状は皆さまも知っての通りだ。通常の食事を受け付けないというのは一般社会への不適合を表し、病院から血を盗むのも食すらままならない窮状の表れ、「首を切ってもう一度殺すべき」発言は解雇と社会的死亡の直言だろう。

 

 彼らは夜の街で強盗をしばく。正義の為ではない。生き血をすするためだ。ならばこれは夜警というよりはホームレスの自活と捉える方が自然だろう。興味深いのは主人公たちのこの寂しい活動すら長続きしないというところだ。

 

 ドタバタ劇の末、主人公は撃たれ社会から排除される。自殺を試み銃弾に縫われた彼が最後に着ていたのはボロボロの軍服だった。それを死に装束に選んだ彼の気持ちは?彼は祖国のために戦いそのことを誇りに思っていたのかもしれない。しかし祖国のために戦った兵士が安住できる地は祖国にはないのである。ラストのイランへの島流しはまさにその証左ではないか。

 

 パッケージにギラギラと印字されたピンク色のコピー、そこにはゾンビ・アクション・コメディ!!とある。しかし本作はそう軽く受け流せるものだろうか。軽いのは配給担当者の脳髄であって本作ではない。身体にねばりつく重さを、本作から感じたことを否定しない。

 

 

総合評価・星4つ(ステキやん?)

★★★★☆

 

以上