ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

デッドリースト・シー 死のベーリング海

f:id:public-technocut:20190521204056j:plain

あらすじ

ブラック企業、無事壊滅。」

 

 「カリブ海パーリーピーポーするための費用を一攫千金するぜ!」と息巻く頭の沸いた類人猿がアラスカの港に降り立つところから物語は始まる。彼は酒場へ行き、その場のノリで漁船に雇ってもらう。

 

 ベーリング海でホタテ漁を生業とするその船は設備投資に潤沢な予算を割いていた。エンジンと発電機はオンボロ、通信アンテナは旧日本軍レベルの良好さを担保、救命胴衣は中古品で穴が開いている。

 

 沿岸警備隊がこんな鉄屑の出港を許すはずはない。もちろん船長はコンプライアンスを遵守し「ばれないように嵐の中出港しよう」と決意。まるで夜討ちである。もちろんこんな航海がうまくいくはずもなく、ボロ船は台風の中に突っ込み、船員のほとんどが死亡する。船長は「ベーリング海に神は存在しない!」とわけのわからん責任転嫁の決め台詞を吐くが全く同情できない。笑いながら全裸で地雷原に突っ込むようなマネをしておきながら「自然は厳しい…」と被害者ぶるストーリーは乾いた笑みしかもたらさない。

 

 本作の舞台は嵐の夜のベーリング海。もちろん全く撮れていない。ただただ暗い。遊園地のアトラクションに張り合っているようにずっと揺れまくるカメラ。飛沫を映していればいいと開き直るかのようなザッパーンの繰り返し。甲板のクレーンが制御不能となって暴走するシーンではクレーンをろくに映さない。

 

 乗組員が船を捨て水面を漂流する終盤のシーンは秀逸だ。彼らが装着する赤色の救命胴衣は全身タイプで、頭頂部から足のつま先まで完全に覆われている。夜の暗さと波の激しさも相まって、誰が誰だかわからない現象が発生する。視聴者は赤い粒が海に浮かんでいる様子を背景にしながら字幕を読む作業を強いられるのだ。

 

 パイが潰れたとかしょうもないことで喧嘩したあげく甲板から転落して低体温症で死にかけるシーンも本作の致命傷といえるだろう。トムとジェリーみたいな追いかけっこで死にかけといて何が「自然は厳しい(キリッ)」なのか。

 

 自然に畏敬の念を持つのなら、その恐ろしさを映してこそだと思うのだが。本作はバカを映してはい終わりの雰囲気系映画である。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上