ワンコイン・ムービ-レビュー

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100歳の少年と12通の手紙

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あらすじ

「オスカー10歳。白血病で入院していたが、ある日、自分の余命が僅かなことを知ってしまう。落ち込む彼に生きる希望を与えたのは、口の悪いピザ屋の女主人ローズだった。ローズはオスカーに2つの提案をする。それは1日を10年と考え日々を過ごすこと、そして毎日神様に宛てて手紙を書くこと。その日からオスカーの日常はめまぐるしく変わり始める。初めての恋、キス、浮気、試練…。オスカーはたった10日間で100年分の人生を経験していく(パッケージより抜粋)」

 

 販売・アルバトロスと書いてあるのを見て思った。この映画マトモそうに見えて実はクソやな!と。文部科学省選定作品との印字を見て思った。権力濫用常習犯の三流官庁が偉そうに推薦なんぞしやがって、文句があるなら俺を医大に不正入学させてみろと。しかし忘れてはならない。見る前から作品にレッテルを張ってはいけない。配給や文部科学省が有罪だとしてもだ。ついでに俺も有罪である。本作はごく普通のちゃんとした映画であった。

 

 本作を端的に説明するならば、人生における認知行動療法の有効性を描いた作品だと言えるだろう。本作では奇跡はお呼びでない。少年の病気は治らない。現実は変わらない。ならばモノの見方を変えるしかないというのは合理的発想である。たとえそれが1日を10年と考える強弁だとしても。

 

 合理性だけが人間を律するわけではない。オバハンは少年に「神に手紙を書け」と一種の告白を行わせる。理性と宗教が共存する。それは心理学と神学のハイローミックスだ。すなわち認知行動療法F-15で、神への手紙はF-16なのだ。あるいはその逆かもしれない。双璧に心を守られて、少年は安らかに死ぬ。その過程を見つめる、本作はそれ以上でもそれ以下でもない。

 

 作中の色合いの大部分を占めるのは黒である。息子の遠からぬ死を告げられた両親の黒とグレーのコート。医師や看護師の白衣さえ陰影に侵略されている。少年が残された時間の大部分を過ごす病室も同様だ。窓から差す日光がわずかに少年の顔を照らす。それは僅かな命の輝きだろうか。

 

 少年の心に幸福を流し込む色は青である。青、それは恋人の名前だ。彼女はチアノーゼの症状で肌が部分的に青く染まってしまうのだ。そんな彼女と過ごす時間は少年に救いをもたらす。彼女と共にソファに体を沈め音楽鑑賞に耽る彼は、夢でしかありえない未来へと先取特権を行使している。和解した両親とともに見るTV。青白いモニターの光が彼らの笑顔を照らす。

 

 脇役として登場するデブガキは一見の価値がある。彼は齢9歳にして体重98kgを誇るクソデブであり、医師から食事制限をかけられた結果飢餓に陥り、やむをえず座薬を食った伝説を保有する傑物である。彼は主人公の恋のライバルとして立ちはだかる。胸に蓄えた豊満な脂肪を武器にしたブレストアタックが恋路を阻む。他方、デブガキは主人公のために脱走を手助けする厚い友情の持ち主だ。友情のためにデブガキはキーピックの技能を披露する。彼には剣のカギなど必要ないのだ!

 

 ラストでオバハンが「私は少年から愛をもらった」などと偉そうに宣言する割には、愛情の欠如に起因する恋人とのトラブルという伏線が放置されたままになっているなど欠点もあることは最後に付け加えておく。

 

 

総合評価・星4つ(ステキやん?)

★★★★☆

 

以上