ワンコイン・ムービ-レビュー

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アウトブレイク・エクスプレス

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あらすじ

SARSウイルスに汚染され中国大陸を爆走する超特急1120号。パニックに襲われる乗客たち、姿なき敵に挑む美しき女医。そして7億人民の明日を決める運命の瞬間が刻々と迫る!!(パッケージより抜粋)」

 

 ある現場でSARSが発生する。もちろん当然国の怠慢のせいなどではない。企業のせいである。この悪徳企業の金満家は感染の事実を隠蔽し、感染した従業員を鉄道で逃走させようとする。そう、資本主義者こそSARSに係る諸悪の根源なのだ。

 

 資本主義の豚によって酷使されたかわいそうな従業員たち、彼らを救いパンデミックを防ぐため、我らが人民解放軍の美しき女軍医が立ち上がる。偶然鉄道車内に居合わせた非番の軍人たちも快く彼女に協力する。制帽をきちんとかぶり、シワ1つ無い軍服に身を包んだ彼らは異口同音に祖国への忠誠を誓う。「喜んで任務に服します!!」

 

 ここで従業員たちの新たな設定がアンロックされる。彼らは西側資本主義思想に毒された悪徳経営者の汚らわしい手によって給料をピンハネされていたのだ。それを聞いた美しき女軍医は同志たちからカンパを募り、従業員たちに義援金を施す。そう、社会システムとしての福祉ではなく、あくまで「施し」なのだ。アンシャン・レジームの香りが漂う。このシーンは福祉を描くにあたっての中共の限界を露呈した公開情報と言えるだろう。

 

 物語はジェットコースターだ。女軍医の母が病死する。母は同じく医者でSARS対策のため働き、感染して倒れたのだ。その死は一片の疑いもなく称えられる。国のために死ぬことこそ美徳!なんと美しく気高い真理だろう。この戦意高揚シーンを見ていると、かつて320万の同胞を無為に殺したビッグでジャップなエンパイアへの憧憬を抑えることができない。

 

 軍は総力を挙げて女軍医をバックアップする。そして全てを乗り越えた女軍医は治療に成功。我感動超勃起的。

 

 時代が時代なら、例えば17世紀、王とその軍隊を無条件に称賛していればよかった時代であれば、本作は一定の評価を得ることができただろう。現代においては?推して知るべし。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上