ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

アウトブレイク ライジング

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あらすじ

「みんな生活に疲れてるんや」

 

 思えばパッケージからして本作は破滅願望的な美しさを誇っていた。どこかルーチンワーク的に世界を浄化せんと力無く挑みかかる硝煙、窮屈な制帽と別れを告げた短髪、その重量で体幹を圧迫する革製の装具。荒い画像しか載せられなくて心苦しいが、あの時エロビデオ屋の片隅で本作と出会った私の心は確かにざわついたのである。

 

 本作のストーリーは複雑でも何でもない。ある日落下した人工衛星にゾンビウイルスが付着していたので大勢の人が感染して死にました、こんなところである。そこでは自分の力ではどうしようもない外部的要因によって生活が破壊された場合において、半ば諦めの念を抱きつつ戦う人々の姿が坦々と描き出される。これは我々の日常を描いた作品だ。

 

 冷静に考えてみると我々が生活と呼ぶ日々は常にアウトレンジな攻撃を受けている。ふざけた納期、災害としか思えない上司、あるいはバカ旦那にクソ嫁か。これらは皆ゾンビである。本作はゾンビという例を使って我々が忘れていること、あるいはあえて忘れようとしていることを眼前に突き付けてくれるのだ。そして突き付けるだけで何もしない。アドバイスか何かをくれるわけではない。いや、アドバイスごときで人生がどうこうなるわけではないと解釈すべきだろうか。

 

 それを証明するかのように坦々とゾンビを処理する保安官。手にしたハンドガンでゾンビの大群と渡り合い、その死体の山の中に埋もれ、しばし呆然とする、彼は私たちだ。タスクに溺れ、生活の垢に染まった私たちだ。

 

 小道具の使い方も良い。脱ぎ捨てられた消防士のヘルメット。それは雨に濡れ、バイザーには血もこびりついている。見ているだけで重い。慌てた登場人物がテーブルに落としたショットシェル。弾頭を起点にリムが弧を描く。その長さは段々と短くなっていく。心臓が早鐘を打つように、銃弾のメトロノームはコロコロと不安を煽る。

 

 

総合評価・星4つ(ステキやん?)

★★★★☆

 

以上