ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

GIRL'S LIFE

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あらすじ

「道は開ける」

 

 主人公のギャルは両親や元カレとケンカして家を飛び出し、ネカフェ難民になってしまった可哀そうな女の子である。彼女はキャバ嬢として東京に羽ばたく。「ナンバーワンになる!」と宣言する彼女のいじらしい努力が見る者の涙を誘う。

 

 彼女はムカつく客をぶん殴ったり、ムカつく客からぼったくったりして売り上げを伸ばす。無茶苦茶な接遇だなと怒るのは早計である。これは日本の過剰接客に警鐘を鳴らし、サービス業従事者の労働条件を改善しようと試みる気高い挑戦である。

 

 なんやかんやしている間に彼女はモデルとなる。そしてAVに勧誘してきたオッサンをボコボコにしたり同僚のモデルをボコボコにしたりする。ついには仕事で逆ギレしたあげく、女友達に「私の体が目当てで引っ付いてんだろ」と三下り半を突き付ける。そして彼女はショップ店員となり、そしてなんやかんやでデザイナーになってハッピーエンドである。

 

 本作の素晴らしいところは、主人公のギャルが「ごめんな、私、欠陥人間やから」と自分の弱さを認め立ち上がっていくところである。原理主義者ならば「欠陥を自覚しているなら治すために努力しろ」と戯言を言うかもしれないが、その発想は生産性でしか物を図れない大企業資本主義のカイゼン思想に基づいている。すなわちギャルはその思想に反抗するのだ、人間よ自然に帰れ!

 

 美術も素晴らしい。本作ではところかまわず地面から上方向へのライトアップが多用されている。場所がキャバクラだろうが、居宅だろうが、心療内科だろうがお構いなし。どの場面も同じように光り輝き、本当にそこにいるのかわからない。もちろんこれはメリハリのない光の使用ではなく、すべての場所を平等に光らせようという、我が国憲法第14条第1項の趣旨を汲んだものである。

 

 金目当てで接近してきたホストが急に脈絡なく良いやつにクラスチェンジした後、特に進展もなくフェードアウトする現象や、人工池にデコレートした亀を放流するシーンなどは残念ながら私の低品質な脳では残念ながら理解が及ばなかったことが残念で残念だ。

 

 私のやりたいことって何だろう?→ハナから見つかるわけないからとにかく行動!→結果ハッピーエンド、これは骨格としては問題ないと思う。しかし、起こること全てが主人公に都合よく働くという調子のよさは作品を堕落させている。一言で言うなら人生万事塞翁が馬の濫用だ。もし自分がテロリストなら本作をこう評価するだろう。だがこれは誤りである。仮にテロリストの主張を受け入れたとしても、それは時勢にあっているではないか。彼らは書店を見たことがないのだろうか?いま流行している「なろう系」とかいう小説を。努力はしないが結果はついてくる、これが現代の正しいファンタジーであり本作はそれの忠実なしもべである。

 

 日本で、本作に出会えたことを、私は神に感謝している。もしアメリカで出会っていたならば、私はライフルにパンプストックと銃剣を装着し、本作の関係各位へ祝砲をプレゼントしていたかもしれない。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上