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戦国番長 ガチザムライ

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あらすじ

「ガチ…?」

 

 本作の主人公である低脳は「時代は下克上じゃ!ワシは侍になって天下をとるんじゃ!」と息巻く、大志を抱いた青年である。彼は“いくさ”と称する戦闘を日々行っていると主張するが、その内容は木刀や農具を持ち出したガキ達がケンカするという、凄まじい低烈度紛争である。

 

 主人公は母親から「ケンカは止めて農作業の手伝いをしてくれ」と日々懇願されるが、ケンカじゃねえよ!いくさだよ!とクソの様な逆ギレで反撃する。そのくせご飯はママに作ってもらう。彼は食事の都度におかわりを要求した挙句、母親の分まで胃袋に収める親孝行ぶりを見せつける。

 

 そして展開されるしょうもないドラマ。「女のアソコが見たい」と春画を見てフガフガするシーンや、メイクばっちりの百姓娘に土下座して「キスさせてください!」と懇願する鬼気迫るシーン、夜空を眺めながら放尿していたかと思えば急に「見えた!俺がサムライになる姿が!」とラリるシーンなど選り取り見取りである。

 

 主人公達は調子こいて近隣の村の番長になる。するとそこに本物が帰ってくる。彼は戦場から戻ってきた帰還兵で真剣で武装している。もちろん実戦経験者である。主人公の部下達はマッハで裏切りを選択する決断力をもって主人公への忠誠心を示す。

 

 そして迫力満点のバトルが始まる。主人公は木刀を使用。一方の元部下達は皆真剣で武装している。繰り広げられる剣戟。木刀と日本刀が互角の鍔迫り合いを演じるそのシーンは当時の日本の冶金術の低さを表現しているのだろうかと勘繰ったがどうやらそうではなさそうだ。緊迫感も何もあったものではない茶番が一定時間経過すると主人公は仲間から真剣を入手。なんやかんやで帰還兵をボコってFinである。

 

 本作のパッケージには「戦国時代にも不良はいたという発想でつくった」との記載がある。発想そのものは悪くないといいたいのだが、いかんせん時代が時代であるためどうしても現代モノの様なヤンキークエスト in モラトリアム的なドラマを表現することには限界があるとしかいいようがない。

 

 時は戦国16世紀。労働や教育に関するモラルは未発達。子ども=小さな大人と考えられていた世界であり、少年兵という概念すら無いのである。そんな戦時社会でそこそこいい歳こいた青年が棒切れふりまわして遊んでたら誰が見ても村八分じゃねえかとの思いを断ち切ることはできない。ヤンキー=バイオレンスと捉える限り、戦時中に彼らが主役となる事は不可能なのだと言わざるを得ない。結局本作はただバカが暴れているだけ、それ以上でもそれ以下でもない悲惨な結末を招いている。

 

 本作から反対解釈を得るとすれば、ヤンキーがオラつける社会というのはモラルが教化された平和が前提となった社会であると、ならばヤンキーは平和の象徴ではないかと。詭弁だと言われればそれで終わりだが、せいぜいこのぐらいしか本作を好意的に解釈する方法は無い。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上