ワンコイン・ムービ-レビュー

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セイビング・ジェシカ・リンチ

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あらすじ

「そういやこんな人いたな」

 

 本作は、捕虜になった女性米兵を虐待する残虐卑劣なイラクのゴミ共を偉大なるUSAが粉砕するジャスティスムービーであると私は想定していた。しかしその期待はあっさりと裏切られた。むしろイラク人の大多数は善人として描かれる。サダムと愉快な砂漠の仲間たちがイラクの良民をシバく、それに耐えきれなくなった有志が米軍と強調してミッションコンプリートというのが大まかな流れである。

 

 米軍に協力するイラク人はジョンレノンみたいな胡散臭い眼鏡をかけた弁護士で、何故捕虜になった女性米兵を助けるのかと問われると「アラーの教えに従ったまでだ」と回答。ちなみに彼の名前はマホメッドである。パーフェクトすぎて乾いた笑みしか出てこないのは私だけではないだろう。

 

 偽レノンは「米軍は解放軍だ」と力説するが、妻からは「サダムも糞だけど米兵も誤爆でご近所さん殺してるじゃないの。要するにどっちも糞よ」とド正論を吐く。しかしそんなの関係ねえ。偽レノンは民兵が夜間外出禁止令を出して警戒中の中、妻を伴い子を肩車して悠々と米軍陣地にたどり着き、捕虜の位置とイラク兵の配置を情報提供する。お前はメタルギアソリッドか。

 

 その後は米軍の救出チームが、イラク軍の撤退した無抵抗の病院でオラつき、女性兵士を救出してファンファーレである。何のカタルシスも無い。

 

 本作をどう捉えるか。アクション映画としてはゴミ同然である。序盤の戦闘シーンはアメリカ軍がボコられて終わり、ラストの戦闘シーンは上述した通りただのお散歩である。やはり本作は戦意高揚のためのプロパガンダ映画として捉えるのが正解だろう。

 

 しかし本作は、イラク人は基本みんないい人なんやでアピールが強すぎてプロパガンダとして成立していない。敵対するイラク兵ですら、降伏した米兵を殺さず捕虜にし、戦死した米兵の遺体もソマリアの様に損壊するわけでもなくきちんと埋葬する。全くお話にならない。

 

 プロパガンダカリカチュアといった類のものはその醜悪さゆえに美しさを誇るという事を忘れてはいけない。不潔な野獣イラク軍に対して大正義米帝が裁きの鉄槌を下す。戦闘終結後はアラブ女性が黒人米兵に股を開き「I love nigger dick!」ぐらいは言ってほしい。その後人権団体やフェミニスト団体からボロクソに叩かれてこその戦意高揚映画ではないか?

 

 この手の作品を作るにあたっては敵国人の人格など気にしてはいけない。制作陣は光り輝くクズにならなくてはいけない。彼らは是非WWⅡ時のミッキーマウスの活躍を見習ってほしい。

 

 唯一楽しんで見られるのは序盤30分の戦闘シーンである。私がお勧めするチェックポイントは2つ。“壁を背にしてRPG-7を発射”するイラク兵と、“M16A2をフルオートで撃つ”米兵である。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上