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神風 KAMIKAZE

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あらすじ

「ごちゃごちゃ言わずに働けデブ」

 

 主人公のクソデブは、会社の売り上げに貢献せず、1人別室にこもって自動栓抜き機を作っているという不条理な理由で突然会社を解雇されてしまう。晴れて立派な無職となった彼は、すでに結婚して一軒家を建てている姪の家に転がり込んだあげく、その2階を占拠して1日中テレビを見る生産的な生活を送ることとなる。

 

 姪夫婦がバカンスに行っている間、彼は凄まじい発明品をつくりだす。それはパラボラアンテナ型のライフルで、それをテレビに向けて引き金を引くと、映っている人間が死ぬというロクでもない発明だった。彼は自分を解雇した会社を恨んでいた。だが、それ以上に彼には秘めたる固い信念があった。「女子アナを見ているとムカつく」この一本筋の通った魂に動かされるように彼はトリガーを引き、女子アナを殺害し続ける。

 

 捜査サイドは大困惑である。銃弾は見つからないわ、どこから撃たれたかわからないわ、全てがわからないのである。しかし指揮官の警視は家電屋で子どもがテレビに向けておもちゃのピストルを撃っている光景を見て「謎は全て解けた!犯人はテレビを狙撃しているんだ!」と実に科学的かつ実証的な判断力で犯人逮捕へと前進してゆく。犯人もアホなら警察も大概である。

 

 テレビ狙撃は生放送に対してしか効果が無い。ならばとタイミングをずらした録画放送で対抗する警察。しかしクソデブはテレビ局のシステムに侵入して回線を操作して大道具係の兄ちゃんをぶっ殺す。このままではイタチごっこだ。ならば直接相手を説得するしかない。そして警察がクソデブを説得するために選んだのは通信大臣(女性)である。閣僚が殺害されるリスクなど屁でもない。これが本場のノブレッソブリージュなのだろう。

 

 一方のクソデブは完全にバグっていた。背中に「神風」と刺繍が入ったワインレッドのナイトガウンを着こみ、おでこには日の丸のハチマキ。時は来た。通信大臣はテレビを通じてクソデブに語りかける。「貴方には才能がある」「こんなことをしていても意味は無い」「その能力を社会のために生かすべき」最初こそ真っ当な説得だった。クソデブですら彼女の話に聞き入り改心するかと思いきや、通信大臣は突然声を荒げ「貴方はカミカゼではない!」と叫び出したのだ。するとクソデブも逆上し「俺はカミカゼだ!ハラキリではない!」と雄叫びを上げる。

 

 見かねた警視が通信大臣を突き飛ばして、対テレビ狙撃銃を発射してクソデブのシステムを破壊。その後は警察のローラー作戦によりクソデブは発見された後、秘密警察により暗殺されてFinである。

 

 本作における「カミカゼ」とは一体なんなのだろうか?我々日本人がカミカゼと聞いて思い浮かぶのは、元寇のときに発生した台風もしくは太平洋戦争時に爆弾を積んだ日本軍機が米軍艦船に体当たりする悲惨な戦法のどちらかだろう。対して本作のクソデブの行為は安全圏から罪のない人間を狙撃する犯罪行為である。まずは元々の、日本における「カミカゼ」の意味をはっきりとさせなくてはなるまい。

 

 まず元寇時の「カミカゼ」について、これはかつて元軍の船団を一発で吹き飛ばし、負けそうだった日本軍を救ったハットトリック扱いされていたが、近年の研究では、日本軍と元軍の戦闘は、元軍が主力兵科とした騎兵の運用ができなかった事、徴兵した南宋・高麗兵の士気が低かった事などから、日本軍優勢の戦闘であったことが判明しており、「カミカゼ」は弱った元軍に対する死体蹴りのようなものであったと言える。

 

 太平洋戦争時の「カミカゼ」については、質量ともに劣る旧日本軍が米軍艦隊に多少なりとも損害を与えるべく行った無益な戦術である。桜花に至っては米軍から「バカ爆弾」扱い呼ばわりされる始末。しかし戦時統制化における教育を考慮しても、兵士達が自らの命を賭して戦いに臨んだ事実を無視してはならない。

 

 さて、ここまでスカスカの脳みそを振り絞って日本の「カミカゼ」について考えてみたのだが、どう考えても本作の「カミカゼ」とは一致どころか掠りもしないとしか言いようが無い。元寇時のカミカゼは偶然起きた自然現象、太平洋戦争時のカミカゼは自爆戦法、本作のカミカゼは女子アナへの逆恨み。

 

 はっきりと申し上げれば本作は祖国日本に対する侮辱的作品であると判断するほかないだろう。タイトル問題を無視したとしても、無職のデブがテレビを撃つ銃を発明してドギューンドギューン。こんなストーリーで映画を名乗れるのであれば、田舎の自治体がつくっている予算不足の定住PVは全てハリウッド作品である。

 

 

総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上