ワンコイン・ムービ-レビュー

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トゥーム・ソルジャー

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あらすじ

「何が冥王ハデスだよ」

 

 本作は設定からしてブッ飛んでいる。「天地創造以前に存在した冥王ハデスの霊廟を発掘中の研究チームと連絡がつかなくなったから探し出せ」というのが主人公たちの任務である。天地創造以前なら存在という概念もクソもねえだろと言いたくなる。こんな研究に資金を出す企業もバカなら研究する奴もバカであり、出だしからバカの二重奏が奏でられる本作の先行きには不安しか感じられない。

 

 捜索隊の編成は、研究チーム隊長の姉である女学者、出資企業のボンボン、傭兵数名である。一方の冥王ハデスの造形は微妙の一言に尽きる。血濡れの長爪こそグロテスクで良い出来であるが、冥王とかぬかす割に身長は平均的な成人男性程度。マントに骨の欠片を貼り付けたようないで立ちは変質者にしか見えない。これに対抗する傭兵たちの敢闘は素晴らしい。「なんで銃が効かないんだ!」と叫びつつライフルを撃つルーチンワークで半数が死亡する。

 

 唯一特筆に値する傭兵は、ある男兵士である。彼は他の傭兵が銃火器武装する中、ナイフ一本で捜索地へ乗り込む。「お前は初代バイオハザードのクリスか」と言いたくなるが、残念ながら彼はメタボリックデブである。この身体じゃナイフクリアは無理だろと思っていたところ、ハデスの一撃でそのナイフすら手元から失ってしまう。挙句の果てに醜い腹を震わせながら無意味な肉弾特攻でハデスに挑み、デブの串刺しをセルフメイクするという生産性あふれる死に方を視聴者に学習させてくれる。フォーエヴァーデブ。

 

 生き残りは対抗策を考える。それは「一夜漬けで古文書を解読して、それに応じて対応する」というものであった。お前らは期末テスト前の高校生かと呆れかえる知能指数である。あげく解読の結果は「灰を撒く」である。行方不明者救出任務が花咲かじいさんプロジェクトへとコペルニクス的転回を見せた本作の度胸は嫌な意味で敬意を払うべきであろう。

 

 結局、わけのわからない灰が急に登場してそれを撒いてハデスを封印。一件落着かと思いきやボンボンが生き残りを攻撃し行動不能に追い込む。そしてボンボンはこの任務の真の目的を告げる。「冥王の技術が企業にとってどれだけの価値があると思う?」私がその場にいれば即座にゼロであると返答しただろう。

 

 ラストはいきなり企業の研究所に舞台がワープ。ボンボンが、これからも研究は続くぜとほくそ笑みながらジエンドという胸糞エンドである。

 

 本作のストーリーや登場人物の個性はクソとしか言いようが無い。しかしながら本作の評価点はカメラワークである。ダッシュでハデスから逃走するシーンや各登場人物の表情に合わせた場面の切り替えなど他の低予算映画に比べて比較的高レベルであると感じた。役者の演技や小道具についても、ちょくちょく丁寧な部分が見受けられた。

 

 本作の脚本担当者は腹を切って死ぬべきであると、ろくでもない泡沫候補レベルの評価しか与えられないが、裏方で頑張ったスタッフに敬意を表して本作の評価に星を1つ付け加えたい。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上