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JIGSAW デッド・ゾーン

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あらすじ

「誘拐犯に10年間薬物投与を受け、強化された子供たちが街を襲う」

 

 主人公は田舎町の保安官。10年前に息子を誘拐されて以来、妻と娘ともギクシャクしており家庭崩壊寸前である。そんなある日、拘留された1人の男に対して彼は違和感を抱く。彼は培った捜査勘を信じて免職覚悟で違法捜査を行う。その結果、拘留者の証言が虚偽であることをつきとめ、拘留者の車から多量の薬物が発見された。拘留者は10年前の誘拐犯。そう確信した主人公は同僚の保安官に拘留者の自宅をチェックするように依頼。すると地下室から怪しげな物音が聞こえてくる。「ここからは適法捜査だ」と拘留者を睨み付ける主人公。しかし悪夢はここから始まった。

 

 地下を捜索した同僚が見つけたものは、大量の薬物に怪しげなビデオテープ、そして監禁された少年少女達だった。同僚はその中の1人を解放しようと近づくが、あっという間に喉笛を食いちぎられ殺されてしまう。主人公が誘拐犯宅に駆け付けるも既に遅く、少年少女たちは地下から解き放たれてしまっていた。その様をほくそ笑みながら見つめる誘拐犯を怒りに任せ撃ち殺す。次に主人公が耳にしたのはパニック状態の警察無線だった。

 

 薬物により破壊以外の感情を失った少年少女のパワーは凄まじく、出動した保安官は次々と犠牲になっていく。銃は握りつぶされ、足は引きちぎられる。その上拳銃の弾丸では彼らを倒せない。

 

 主人公は少年少女の中に息子がいることに動揺しつつも妻と娘を救出し警察署へ立てこもる。しかしそこも安全ではない。少年少女たちは天井から侵入し、生き残りを1人、また1人と引き裂いていく。警察署の陥落という治安崩壊の象徴に天井から襲い来る敵というシチュエーションは、バイオハザード2でリッカーと初めて戦った時の様な緊張感を思い起こさせる。

 

 やがて主人公は決断を迫られる。手にしたショットガンで息子を射殺するか否か。彼は家族愛を信じ、銃を捨て息子に歩み寄る。そして抱擁。愛は洗脳に打ち勝ったのだ。

 

 などと徳光の涙のごとく生温い展開にはならない。世界は残酷である。親子の抱擁は、息子が父の首の骨をへし折る音で幕を下ろし、生き残りは全滅してバッドエンドである。

 

 本作はサイコホラーとして出来がいい作品であると感じた。誘拐犯は「家族に愛されているガキを狙った」という計画的クソ野郎であり、彼に怒りを覚えない者は人間ではない。反面誘拐された少年少女には罪は無いのである。しかし彼らの、走るゾンビのごとき凶悪な襲撃シーンを前にして綺麗ごとは通用しない。この光景を見た視聴者は、誘拐犯への怒りをさらに募らせるだろう。本作は構成要素がしっかりしているので最後まで緊張して見られる秀作であると評価できる。マニアックな話で恐縮だが、主人公達保安官が装備しているベレッタ92Fという拳銃は9mmパラベラム弾という弾丸を使用する。この弾薬が薬物中毒者に対してダメージを与えられないという事態は現実に存在した実例である。上述した拳銃が効かないというシーンは、このマニア的視点から見てもリアルである。

 

 ただし本作は多量の流血、出血シーンや、家族皆殺しエンドという後味の悪い作品であるため、人によっては視聴は控えたほうがよろしいかと付け加えておく。

 

 

総合評価・星4つ(ステキやん?)

★★★★☆

 

以上