ワンコイン・ムービ-レビュー

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エリート☆フォース

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あらすじ

「偉大なるロシア軍が麻薬カルテルをぶっ潰す」

 

 本作では尺の三分の二程度をどうでもいい前フリに裂いている。主人公の男が闇市を襲撃したり、ヤク中をしばいたり、マフィアの女に駆け落ちを迫ったりする正道歩む人間の丁寧な描写はきっと視聴者の心に何かを残さないだろう。なんだかんだで彼は軍に入隊することになる。

 

 軍は麻薬カルテル殲滅のために特殊部隊を編成しようとしていた。その選抜基準について指揮官は「命令違反者等をよせあつめれば最適だ」と革命的組織論を提言する。特殊部隊といえば精鋭中の精鋭によって編成されるべきであると私の様な凡人は考えるのだが、大祖国戦争を闘いぬいた偉大なるロシア軍人の思考レベルではそんな凡庸な発想は唾棄すべき思想なのであろう。

 

 そんなこんなで主人公を含む4人が部隊員に選抜される。なお主人公はロシア人で、のこりの3人はそれぞれチェチェン人、タタール人、ウクライナ人である。理想的な社会主義によって編成された多民族部隊というわけであり、いやがおうにもロシアの寛大な国家理念が透けて見えるようである。彼らを訓練するのは中国共産党軍の技を身につけたという謎のヒゲジジイである。彼は主として格闘に比重を置いた訓練をほどこす。もちろん格闘訓練を馬鹿にするつもりはない。格闘訓練は闘争本能を強化し、武器無しの最悪の状況下でも闘えるという強靭な精神力を育成するために有益なものである。しかしながら銃火器が発達した現代においてはあくまで補助的に取り入れられるべきものであり、現代戦において格闘中心の戦いを挑めばどうなってしまうのか。私の貧弱な文章力で表現できるものではないのでこれについては書籍に簡潔な一文があるので引用させていただく。

 

朝鮮戦争のさなか、北朝鮮が武術精鋭部隊を連合軍の前線基地へ送り込もうとしたが、目標から数百メートルも手前で重機関銃と砲撃の掃射により全滅した。”

ロン・シリングフォード著『実戦格闘術ハンドブック』P15より

 

 なんやかんやで彼らは訓練を終え、アメリカ軍の空母によって敵地まで輸送される。なおアメリカ軍の活躍はこれだけであり、「米国×ロシア 対テロ連合特殊部隊」などというパッケージのコピーは盛大な詐欺行為であることがここで明らかにされるサプライズである。

 

 敵地での戦闘シーンは全体的に映像が暗い。彼我の動きがわかりずらくアクション性に乏しく、せっかくの売りの格闘もパッとしない。主人公が捕らえられ尋問されるシーンでは、主人公が幽体離脱により敵の意識に潜り込むという失笑ものの場面展開まで披露される。あげく登場する組織のボスは、脱走したロシア将校という設定のはずなのに、和服を着て日本刀で主人公を襲撃する。主人公も日本刀でこれに応戦、ボスを斬り伏せる。ボスの断末魔の一声は「ありがとう、すばらしい」という非常に難解なダイイングメッセージである。私の劣った脳みそではこの発言の意図するところは理解不能であった。

 

 本作は「偉大なるロシア人が、学も教養も無い辺境民族を従え、アメリカや中国を利用して正義を成す」という素晴らしい国威発揚ムービーであり、お粗末なストーリー・設定、魅力の薄っぺらい登場人物達が織り成すこの作品の輝きは、早朝繁華街の路上にまき散らされた嘔吐物の様な神々しさを放つものであると評価できる。

 

 総合評価・星1つ(神が憐れむレベル)

★☆☆☆☆

 

以上