ワンコイン・ムービ-レビュー

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七人のマッハ!!!!!!!

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あらすじ
ムエタイ、テコンドー、ラグビー、サッカー、体操、セパタクローの選手たちが麻薬ゲリラと戦う」

 

 本作はパッケージやあらすじを一見すると気楽に楽しめるコメディー映画の様な印象を受ける。しかしながらそれは完全に罠である。本作ではスポーツ界の選抜選手たちがチャリティー活動のために貧村へと赴く。住民との心温まるふれあいシーンもつかの間、麻薬ゲリラたちが村へ乱入し、老若男女を問わない無差別攻撃を開始する。住民達は片っ端から機銃掃射でハチの巣にされ、阿鼻叫喚の地獄絵図が描かれる。生徒を守ろうとした教師は腹部に銃弾の嵐を受け絶命し、娘の目の前で父親が公開銃殺される血しぶきの惨劇である。

 

 なすすべもなくゲリラたちに包囲され、魂が抜けたようにへたり込む住人と選手達、しかし一台のラジオから流れたタイ国歌が彼らの愛国心に火をくべる。愛国心ブーストのかかった彼らは国歌を熱唱し、「タイ王国万歳!」と叫びながら銃で武装したゲリラに向かって素手で特攻をかける。無謀を通り越して愚かとも思えるその光景を見ていると、竹槍が支給されただけ大日本帝国はマシだったんだな、などと誤った認識を抱いてしまいそうになる。銃を持ったゲリラたちは圧倒的優勢を持っているはずであるが、そんなの関係ねえとばかりに突っ込んでくる住民たちの前にボコボコにされる。その様はまるでゾンビ映画の様で凄まじくシュールである。

 

 ここで展開されるアクションシーンでは各スポーツの選手たちが活躍する。そのアクションシーンは頑張って撮影された、それなりに迫力のあるマトモな映像である。しかしながら素材が良くてもそれが状況とマッチングしていなければ魅力を引き出すことは不可能である。ストーリーがコメディタッチならば本作は十分面白い映画だっただろう。しかしながらジェノサイドが行われた村を舞台にして「セパタクローのボールで相手を倒すぜ!」などと意気込まれたところで、ふざけているのかとしか思えない。特にタイ国旗を振り回しながら敵をシュートで倒していくサッカー選手に至っては失笑の権化としか言いようがない。その強烈な違和感は戦争映画に名探偵コナンが登場するようなものであると言えばご理解いただけるだろうか。本作はコメディアクションとしてもハードアクションとしても愛国プロパガンダとしても成立しえないわけのわからない作品である。

 

 本作唯一の救いは序盤に登場する1人の老婆である。彼女はラグビー選手から毛布を受け取るのだが、ラグビーという競技を知らず、あげくラグビーをラブビーと間違った発音で覚えてしまう。そのあげく「ラブなら私も経験がある」「昔は旦那とよく励んだ」と恐ろしく無価値な情報を提供してくれる。これには選手も苦笑い。このシーンを見て一つの考えが浮かんだ。それは人が「どう反応すりゃいいんだよ畜生」という場面に遭遇した場合に苦笑いという選択肢が出てくるのは日本だけに限らないグローバルな反応ではないかという仮説である。残念ながら私の無教養な脳みそではこの仮説を検証することはかなわないが、苦笑いについて科学した本がいつか出版されることを心から祈りつつ本文を終わりたい。

 


総合評価・星2つ(500円の価値無)
★★☆☆☆

 

以上