ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

ラプター

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あらすじ
「観光地に現れた巨大ワニを退治せよ」

 

 本作の主人公は金髪ロン毛のイケメンであり、姉や甥と動物園を経営する好青年である。彼は地上げ屋の嫌がらせを受けながらも頑張って経営を続けていた。そこに体長6mを超える人食いワニが登場し、観光客を襲い始める。ワニが人を襲うシーンはなかなか恐ろしく、ワニが仕留めた獲物の死体を貯蔵地で食べごろになるまで腐らせるという設定もグロテスクであり、ワニの脅威を煽る、良くできたポイントである。

 

 市は観光業を守るためにワニに懸賞金を懸けてハンターを集めることを画策する。しかしこれは全くもって愚策と言わざるを得ない。統率のとれていない烏合の衆を投入したところで組織的にも能力的にも及第点には程遠いことは火を見るよりも明らかである。むしろチンピラハンターの流入により市民に無意味な不安を抱かせるだけではないか。案の定ハンターはクソの役にも立たずに無駄死にするという実りある死に様を視聴者に提供するのみであった。

 

 あげく地上げ屋は「主人公の姉を殺して動物園の土地を奪うぜ」と銭ゲバ丸出しで襲い掛かる。地上げ屋も観光業で食っている連中である。にもかかわらず、ただでさえ評判の下がっている最中に殺人事件まで起こそうとは真に郷土愛にあふれた人間であると言わざるを得ない。彼らは見事殺人に失敗した後、ワニに引き裂かれて死亡した。なお地上げ屋がワニに食われた現場は、邸宅内のライトアップされた小規模プール内である。明々と灯る水中に向かってドヤ顔で飛び込み、ワニの牙にかかるその雄姿は彼らの観察力が人類の平均を軽々と下回っていることの証明であろう。

 

 ラストは主人公たちがワニの死体貯蔵地を突き止めて、集中射撃でワニを射殺して退治する。最終決戦にしては盛り上がりも少なく、ちょっとあっけないものである。

 

 本作では不必要な恋愛要素を無理に詰め込んだ感じがする。環境保護官の女性と地元の少女、彼女たちはそれぞれ主人公と甥と恋仲になるのだが、彼女たちはワニ退治において大した貢献はしていない。制作サイドからすれば作中の花として彼女たちを投入したのだろうが、恋愛シーンはただの中だるみにしか見えない。

 

 ストーリー中盤から登場するベテランハンターも問題である。彼は主人公との初対面シーンで「足が泥にハマって動けないぜ」などと頼もしいセリフを吐く。巨大ワニを追跡し続けている設定の割には、使用する銃は対人用だったりと、所々設定が間抜けである。しかしながら彼は、今までワニの犠牲になった人々の写真を自船内に貼り、彼らのカタキを討つ心を忘れない熱血漢である。ワニを退治した後のエンドシーンで、彼は犠牲者の写真を花びらと一緒に水葬する。この演出はなかなか美しく、胸を打つものがあった。

 

 思うに本作は不要な恋愛シーンを削り、浮いた資源でベテランハンターや主人公の設定を練りこんだり活躍シーンを追加するなりした方が、アニマルハザードものとしては良い出来になったのではないかと愚考する。ここまでかなりボロクソに叩いてきたようにも思えるが、本作は低予算の中で頑張ってつくったという作り手の熱意は伝わってくる作品であり、良作ではないが駄作でもないことは保証できる。

 


総合評価・星3つ(500円の価値有)
★★★☆☆

 

以上