ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

スケートオアダイ

f:id:public-technocut:20160108202911j:plain

あらすじ
「ヤクの取引現場を目撃した不良少年たち。警察に通報するも取引には腐敗刑事が関与していた。警察が頼みにならない状況の中、少年たちはスケボーでパリ中を逃げ回る。」

 

 まず主人公の少年たちについてであるが、彼らはヤクを嗜み、公の歩道を通行人の迷惑も考えずスケボーで走り回り、倒れているホームレスを見つけるとその上を笑いながらジャンプする高い道徳心を備えている。さらには赤の他人の所有物である塀にスプレーで落書きをして器物損壊を楽しむという前衛芸術の才能をも見せつける。そんな彼らがヤク絡みで追いかけまわされることになったからといって、同情するにはいささか彼らのキャラクターは腐敗しすぎていると言わざるを得ない。

 

 汚職警官が指揮を執る特捜隊と何も知らない善良な所轄警察は、主人公たちを追跡する過程でフランス警察の優秀さを余すところなく披露してくれる。直線道路でスケボーに追いつけないパトカー、走ったら息切れする細マッチョの黒人刑事、市民誤射の可能性を考えずに群衆に紛れた主人公たちを銃撃するリスク管理能力、フットサルチームの兄ちゃんに絡まれてビビッて逃げ出す機動隊、悪態をついただけのヤンキーに公然と暴行を加える適法捜査、短射程のサブマシンガンで長距離狙撃を行う戦術思想、なおこのサブマシンガンにはドットサイトが搭載されているがそれを覗き込んだ時には十字のスコープ型照準が浮かび上がっており、「ちょろいもんだぜ」からのオマージュを勘ぐってしまう。

 

 アクションシーンについては「とろい」の一言である。スピード感が全く感じられない。超絶テクで路地を駆け巡るようなアクションを期待していたのだがそれは全くの肩透かしに終わった。パッケージで「パリ最速!」などと煽っておきながら特に極まったスケボーテクニックを見せるでもなくちんたら走り続けるだけである。主人公たちはトラックの荷台に捕まって寄生走行したり、タクシーを逃走手段として利用する。スケボーを前面に打ち出す必要性はあったのか疑問を呈せざるを得ない。

 

 「ヤク好きのガキが、ヤクに手を染めた汚職警官に追いかけられる」という本作の脚本は善悪というものは簡単に分けることはできないとの哲学的問いかけとして再構成できないかとも考えてみたが、拡大解釈に過ぎるだろう。結論として本作は大国フランスの落ちぶれぶりを表しているような完成度の高さを我々に提供してくれた。あのナポレオンも本作を視聴したならば「余の辞書にスケボーという言葉は無い」といってそっぽを向くであろう。

 

総合評価・星2つ(500円の価値無し)
★★☆☆☆

 

以上