ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

グランドクロス シード・オブ・ディストラクション

f:id:public-technocut:20210502200819j:plain

あらすじ

「科学も宗教も中途半端」

 

 先史時代の「種子」が現代に蘇り繁茂しまくってヤベぇんですけどという本作は、疑似科学・宗教系統のMMR映画、としてはパンチ不足の残念な出来に仕上がっている。

 

 こういう映画の美徳は、例えば「ソース」だの「コリオリ」だのといったそれらしい用語をとにかく何でもいいからシャブ中の様に打ち込んでいく破滅的戦闘スタイルにある。しかし本作においてはウソくせえ疑似科学用語が乱用されていない。これは美徳に対する背任罪である。

 

 科学不足を補完するためか本作では宗教関係の引用が見られた。しかし聖書だの死海文書だのエデンだのといったそれっぽく見せるための投入規模はネズミ輸送の域を出ない。

 

 引用された聖書の奇跡に対比して、脇役の捜査官は描写される。曰く「妻と娘が事故で死んだとき神に祈りまくったけど意味なかったンゴ!だから奇跡なんて信じないンゴ!」といった具合に。その彼が魅せる運動は、ただ握ったピストルを撃つだけという不法投棄であった。

 

 登場人物にまつわる問題点は続く。ラスボスのクレイジー植物学者が大してクレイジーでもない問題である。主人公たちは「種子」をどつきまわすために「種子に毒を注入してから爆破する」案を実行に移す。これに対してクレイジー植物学者は「種子を休眠させて研究対象にすべき」と主張する。もちろんその主張を通そうとする過程で銃をブッ放したりするから悪い奴には違いないのだが、主張そのものは「うんそうだね、できるならそうしたいね」レベルの発想であり、彼を魅力ある極悪人と断ずることは私にはできない。

 

 肝心の「種子」も問題である。アメリカを席巻する雑草として絶賛大迷惑をかけまくる災厄として描写はされるものの、忘れてはならない。戦力とは相対的な概念である。

 

 前述のクレイジー植物学者。彼は品種改良によりヤベえ薬草を開発していたのだ。具体的にその効能を述べるなら、腹部銃創を一瞬で全回復させるレベルの力である。「種子」よりこっちの方がヤベえ。そう思わせたが最後。薬草vs「種子」の戦いが始まり、結果「種子」という戦力=魅力は見事減殺されるのだ。

 

 クレイジー植物学者は引き締まったツラをした白髪のデコッパゲであり、彼の装備するメガネからは知性が湧出している。好感が持てる顔面であったことは告白しておく。

 

 後は捜査官の上司がJ・F・ケネディに微妙に似ていたのが腹が立った。「種子なら燃えるやろ、爆撃や!」の精神で出撃したF-16戦闘機のCGも質が高かった。最後に、本作ではやたらめったらカメラのアングルが傾く傾向にあった。私は表現技法について偉そうに語れるレベルの知性を保有していないが、それでも量の増加は質の低下という、軍事原則に則った指摘だけはしておきたい。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上