ワンコイン・ムービ-レビュー

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グランド・クロス レボリューション

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あらすじ

グランドクロス関係ねえし」

 

 「これは真実の物語。強力な電磁バーストが地球のエネルギー網を走った。何か怪しいだろ?俺が暴いてみせる…」。開幕早々この独り語りを聞いて、怪しいのはお前だと思わないホモサピエンスが存在するだろうか。本作は純真無垢に光り輝く疑似科学天上天下唯我独尊系のディザスター・ムービーである。

 

 ストーンヘンジを中心とする古代遺跡は実は地球をテラフォーミングするヤベェ機構であり、10時間ごとにメキシコが吹っ飛んだりインドネシアが吹っ飛んだりエジプトが吹っ飛んだりする。主人公の科学者は「ふざけるな…、電磁カレントが地殻の下を走り集合点で交わるのを知らないのか?」などと尋問してくるが、これらの問い全てに知らないと即答してしまった私の知能が哀れなチンパンジーと同レベルであることは明白だろう。

 

 主人公以外にもラリッった学者はいて、彼は「予言に従いシェルターを起動させるのだ」とわめき主人公を妨害する。もちろん主人公は怒り狂い「完全にイカれちまったのかお前!」と語気を強めるが、正直どっちもどっちのバグり具合である。

 

 なんやかんやでストーンヘンジに「鍵」をぶち込んで世界は救われハッピーエンドという本作。良い意味でも悪い意味でも非常に頭の悪い作品である。もちろん誉め言葉だ。私は本作に対して好感情を抱いている。

 

 魅力として、まずCGの出来の良さを上げたい。もちろん出来がいいといってもせいぜいプレステ2レベルであり、あくまで予算相応の出来の良さという意味である。それでもメキシコやエジプトのピラミッドが噴火して大地を蹂躙する僅か数秒のシーンは作中の要所要所で盛り上がりを作る役割を立派に果たしている。

 

 遺跡を爆撃する作戦(爆笑)のために出撃したF-16のCGも上々だったが、このシーンに関しては戦闘機のCGよりもむしろその機動に注目したい。具体的には曇天に向けて急上昇して高度をとったのち急降下で爆撃を仕掛ける戦闘機の運動エネルギー。それが遺跡のカウントダウンとリンクし緊張感を視覚化してくれているのだ。

 

 主人公・御用学者・軍・悪役と行動主体が4つもあるにもかかわらず、舞台移動を最小限に抑えた、比較的見やすいストーリーテリングを実現した脚本担当にも称賛を送りたい。

 

 ラストで生き残った女科学者が吐き出すセリフがとどめの一撃だ。いったい何が起きたのかを市民に伝えようとする、彼女が海賊ラジオで発したそのセリフは「これは真実の物語」。冒頭に見事にループするその一言は一片の疑いもなく主人公を継承している。ありがちな演出じゃん(失笑)とバカにする方々もいるだろうが、そういう要素をきちんと計算して形にできる作品がいったいどれだけ少ないかを今一度胸に手を当てて考えていただきたい。

 

 本作が全国劇場公開に値するかと問われれば私の答えはNonであるが、それでも本作は気持ちが乗らない曇天の休日に、期待せず気楽にダラダラと楽しめる、低予算映画界のダットサンといえる佳作である。

 

 

総合評価・星4つ(ステキやん?)

★★★★☆

 

以上